第1回可視化技術ワークショップの報告
2/19(土)本学百年館低層棟506番教室においてオープンリサーチセンターとNPO法人綜合画像研究支援(http://www.jiirs.org)の共催で第1回可視化技術ワークショップ「バイオサイエンスのためのビジュアルナノテクノロジー」が開催されました。札幌と福岡のサテライトにもTV会議システムを利用したLive講座として提供されました。 小雪混じりの生憎の天気にもかかわらず、多くの聴衆の方々が集まり、4人の講師の方々の最新情報について活発な質疑応答が行われました。以下に当日の内容を伝えます。

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506番教室にお集りの聴衆
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開会の挨拶を述べる
大隅正子NPO理事長
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後藤祥子本学学長による
ご挨拶
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前半座長を務められた千葉大学
真菌医学研究センター 山口正視先生
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1分子で見る細胞膜のシグナル変換機構
京都大学再生医科学研究所ナノ医工学研究センター 楠見明弘先生
生きている細胞の中で、たった1個の分子の挙動を観察したり、その分子をフォーカスされたレーザー光で捕捉して細胞内で自由に動かしたりすることが、でき るようになってきた。このような1分子法を開発し、さらにそれを利用して、細胞の働き方を調べようという研究が、今まさに始まろうとしている。1分子を見 て触るような研究ができるようになると、たとえば、シグナル伝達分子が細胞内をどのように動き回り、どのようにしてシグナルを次々に伝えていくのか、とい うようなことが、どんどんわかってきそうである。このような研究はまだ始まったばかりであるが、すでに面白い結果、しかも、1分子でないと分からないよう な結果が次々と得られつつある。このような結果の一部をご紹介 下さり、このような新しいタイプの研究に興味をもっていただくきっかけを作って下さった。

生物分野における走査プルーブ顕微鏡
新潟大学大学院医歯学総合研究所細胞機能講座顕微鏡解剖学分野 牛木辰男先生
走査プローブ顕微鏡(SPM)は、探針で試料表面をなぞりながら、探針・試料間の物理情報を画像化する顕微鏡の総称で、1981年に発明された走査トンネ ル顕微鏡に端を発する。SPMは 高分解能観察が可能で、しかも真空中のみならず大気中、液中観察ができるという点で、生物学分野への応用が期待されていた。本公演では、SPMの中でも生 物応用がもっとも盛んな原子間力顕微鏡(AFM)の簡単な原理を説明した後に、AFMを用いた生体試料観察例を紹介 された。また、AFM以外のSPMを利用した生物観察についても、特にAFM像と他のSPM像の同時観察例を中心に紹介された。


後半座長を務められた日本電子株式会社応用研究センター 小倉一道様
集束イオンビームの生物系試料への応用
株式会社日立サイエンスシステムズ 上野武夫様
集 束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)加工装置はもともと半導体デバイスの解析や配線修復用として開発された装置で、材料表面を観察しながら削ったり、金属を堆積させたりで きるユニークな装置である。特定領域の解析が必要な半導体デバイスの世界ではFIB加工技術は最も重要な試料前処理手段であり、試料作製に当たっては上記 の機能すべてが複合的に利用されている。また、半導体以外のいろいろな材料への応用と加工条件の検討も進み、最近では生物系試料の薄膜試料作製への応用も 可能になってきている。しかし、高電圧で加速された金属イオン粒子を用いるFIB加工法を電子顕微鏡試料作製に有効に活用するためにはその特徴の理解も必 要である。ここではFIB加工装置の概要、FIB加工法の特徴およびいくつかの応用について述べ られた。

透過型電子顕微鏡画像のデジタル化
日本電子株式会社応用研究センター 佐藤泰彦様
生 命科学分野で取り扱われる画像は、急速にデジタル化されてきている。これは、本来アナログ情報である透過型電子顕微鏡(TEM)で取得される画像において も例外ではなく、ネガフィルムに代わる画像記録媒体としてCCDカメラが急速に普及してきた。また、これまでに蓄積されてきた膨大かつ貴重なTEMの画像 データも、スキャナを活用することで容易にデジタル化することが可能である。本公演では、演者らが日頃実施しているTEM像のデジタル化の実例を紹介し、 画像取得の際の留意点についても言及 された。


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