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主要な技術


●電子顕微鏡

 電子顕微鏡は、光学顕微鏡の光源のかわりに電子線を用い、レンズのかわりに磁場や電場をもちいた顕微鏡である。可視光よりも波長の短い電子線を用いることで、著しく解像度を高めることができる。電子顕微鏡には、試料を透過した電子を検出する透過電子顕微鏡のほかに、試料表面を電子線で走査することで像を得る走査電子顕微鏡の2種類がある。

 

 

透過電子顕微鏡:TEM(Transmission Electron Microscopy)

超薄切片法
 細胞・組織の微細構造をできるだけ生体の状態に近く保ってその内容構造を観察する上で最も正統的・一般的な観察法。

凍結超薄切片法
 凍結させた試料から直接電顕用の超薄切片を作製する方法。化学的変化を与えず、生の状態に近い像を観察する事ができる。また試料内の物質の分布を正確に検出するためにも応用されている。

急速凍結固定法
 試料を急速に凍結することで細胞の構成要素を氷の中に封じ込めて物理的に固定する方法。凍結技法の難点である細胞中の水分を凍結する事で生じる氷晶形成による構造破壊を、急速に凍結する事により最小限に抑えた方法である。化学固定よりもアーティファクトが少なく、瞬時に固定することで早い変化を固定する事ができる。

加圧凍結固定法
 高圧下では水の融点が低下し、細胞損傷の原因となる氷晶形成が常温よりも起こりにくいという特性を生かして、ダメージの少ない良好な凍結固定試料を得る方法。従来の急速凍結法よりも遥かに細胞の深部まで明瞭な像が得られる。

凍結置換固定法
 凍結固定法と凍結置換法を組み合わせたもので、物理的に固定した試料を低温に冷却したアセトンに浸して試料中の水分とアセトンを置換する事によりアセトン中に溶かした化学固定剤で固定する方法。微細構造の変形、物質の移動、抽出が少ないという特徴がある。高解像力を持った微細形態分析が可能である。

フリーズレプリカ法
 細胞を凍結割断し、その割断面を白金蒸着して得られたレプリカを透過電子顕微鏡観察する方法。この他に、割断面から氷を昇華させて氷中に埋まっていた構造を露出させてからシャドウイングするフリーズエッチング法という方法もある。この方法では膜の割断面のみならず、膜の真の表面や細胞質の繊維構造などが露出されるので、これらを立体的に観察する事ができる。

フリーズレプリカラベリング法
 上記フリーズレプリカ法で得られた膜上で免疫標識する事によって、特定の膜タンパク質の局在を可視化する方法。

ネガティブ染色法
 電子線に対して透過性の悪い染色液で生体高分子粒子を包んだ時に、周辺より電子線の透過性が高い粒子の方が負のコントラストとして表される総称。試料に孔、亀裂、くぼみ、溝があると正のコントラストとして現れる。非常に簡単な操作で高分解の解像を得る事ができるために広く利用されている。

シャドウイング法
 電子線散乱度の大きな金属を真空中で加熱蒸発し、試料に斜め上方から蒸着して金属が蒸着する部分、しない部分を作る方法。蒸着した部分からは試料の形状や表面形態を、蒸着されない部分からは試料の立体形状や高さを知る事ができる。

免疫電顕法
 組織や細胞内に存在する抗原の局在を、抗体を用いる事により電顕レベルで検出する方法。

 

  走査電子顕微鏡:SEM(Scanning Electron Microscopy)

走査電子顕微鏡(SEM)法
 試料の表面形態を立体的に観察する方法。

超高分解能低加速電圧(UHR-LV)SEM法
 生物試料表面を傷めない低加速電圧領域(LV)の難点である分解能の低さを克服するため、超高分解能SEMのレンズ系を組み合わせて開発されたUHR-LVSEMを使用した観察法。導電性のない生物試料をコーティングする事なく観察する事ができ、試料の最表面の情報を忠実に得る事ができる。

レプリカSEM法
 歯型を作る時に使われるデンタルペーストを生の試料に塗って鋳型を取り、この鋳型を元に作ったレプリカを観察する方法。生状態の形態がそのまま再現されるという利点の他、試料を生かしたまま経時的に観察できるという特徴を持つため、成長に伴う細胞系譜の解析などに威力を発揮する。

凍結割断法
 細胞内をSEMで観察するための一般的な細胞・組織の剖出方法。簡単な器具で手軽にでき、試料を液体窒素中で凍結割断する時の包埋剤によって、割断面の情報に特徴がある。またオスミウム浸軟処理(ODO)法を加える事によって、希薄オスミウム酸による細胞内構造中におけるタンパク質構造破壊の速度の差を利用して、破壊速度の最も遅いミトコンドリア、ゴルジ体などの細胞内膜構造を立体的に観察することができる。

急速凍結置換固定SEM法
 微生物において試料をグリッドとグリッドの間に挟み急速凍結する事により試料を作る方法。この方法で固定された試料は導電性が高いため、無コーティングのまま低加速電圧領域で観察する事ができるので、生体に近い姿を捉える事ができる。サンドイッチ方式によりこの方法を用いると、一つのサンプルからSEMとTEM両方の試料を作る事ができる。

加速凍結・極低温SEM法
 再現性が高く、よりよい凍結状態の試料を得られるという加圧凍結固定法の利点と、大型試料や強固な細胞壁を有する試料など、あらゆる試料の割断ができるというクライオシステムAlto2500の利点を合わせた方法。この方法では細胞の表層や細胞内の微細構造を極低温下で観察する事ができ、同時に加圧凍結置換固定したTEMによる超薄切片像と比較検討ができるという利点がある。

免疫SEM法
 TEMにおける免疫電顕法と同じく存在する抗原の局在を、抗体を用いる事により電顕レベルで検出する方法であるが、広い範囲を一望のもとに立体的に観察できるSEMの特徴を生かし、TEM像では得られない組織の表面や割断面における立体構造を観察する事ができる。
 

 

●蛍光顕微鏡

 特定の波長の光が当たるとその光の波長より長い波長の光を出す蛍光色素を、顕微鏡標本の染色に応用し、観察する方法が蛍光顕微鏡法である。ある特定の光を蛍光色素分子に当てることにより、目的の細胞内の構造が暗黒を背景にして光ることになり、感度よく目的物を検出できる。GFPを用いて行なう生きた細胞での観察や、各種抗体染色観察等、幅広い観察を行なうことができる。
テクノビット樹脂を用いた蛍光顕微鏡観察法  テクノビット樹脂は、抗体染色や in situ ハイブリダイゼーションも可能な親水性の樹脂である。テクノビット樹脂を用いて切片を作成すると、500nmという薄い切片を得ることができるので、高い解像度を引き出すことができる。目的物を蛍光観察した後に、その同一切片を透過電子顕微鏡観察することも可能である。

 

●共焦点レーザー走査顕微鏡

 レーザー光を用いて、厚い試料中の特定の面に焦点をあわせ、かつその上下の焦点があっていない面からの光を排除することにより、光学的に薄い切片像を得る方法である。いくつもの焦点面についての画像をコンピューター内で立体構築して、容易に立体画像を得ることができる。