カモミールnetマガジン バックナンバー(ダイジェスト版)

 2011年12月号 

◆ 目次 ◆ -----------------------------------------------------------------------

(1) 所長だより
(2) 教育時事アラカルト
(3) 学校経営の視点から
(4) 今月のおすすめ書籍

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◇ 所長だより ◇

授業研究(レッスン・スタディ)のねらい
教職教育開発センター所長   吉崎静夫

授業研究のねらいは、大別すると、次の四つになります。
もちろん、これらのねらいは、実際には重複していることが多いのです。

@授業改善のために
 このことは、授業研究を行うための最も基本的なねらいです。そして、その具体的なねらいは、授業実践者である教師が単独で、あるいは同僚教師と協働で、自らがデザイン(設計)し実践した授業をふり返ることによって、その授業を改善するための手がかりを得ることにあります。

Aカリキュラム開発のために
 このねらいは、カリキュラム開発と連携して授業研究を行うことにあります。その際、カリキュラム開発の途中の段階で行う授業研究はカリキュラムの形成的評価のためであり、カリキュラム開発の終了の段階で行う授業研究はカリキュラムの総括的評価のためです。

B教師の授業力量形成のために
 このねらいは、教師が学内外で授業研究を同僚教師や先輩教師と行うことによって、自らの授業力量(授業についての信念、知識、技術など)を形成することにあります。 授業研究は、授業設計(PLAN)、授業実施(DO)、授業評価(CHECK)、授業改善(ACTION)という一連のサイクルの中で行われます。そして、この授業研究が、同僚教師との協働のもとで行われるとき、「学校の課題解決」や「教師の授業力量形成」に大いに寄与することになるのです。これが、世界の教育界が注目する、わが国の「レッスン・スタディ(Lesson Study)」の基本形です。ただし、教育実習生や初任教師の場合には、指導教員(メンター)の指導・助言のもとで、授業設計・実施・評価・改善を行うことになります。

C授業についての学問的研究の進展のために
 このねらいは、授業という社会的な営みをアカデミックな立場から研究して、教師の授業実践を支援できるような科学的知見を蓄積し、授業についての学問を進展させることにあります。そこでは、授業を構成している要素を同定し、それらの要素間の関係を明らかにさせたり、授業モデルや授業理論を構築することが主なねらいとなります。ただし、その場合に留意すべきことは、個々の授業がもつ特殊性(個別性)を超えて一般化(共通性)できるものは何なのか、あるいは一般化のための条件は何なのか、といった視点を忘れないことです。


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◇ 教育時事アラカルト ◇

先生の服装を考える
教職教育開発センター教授  坂田 仰

 大阪府や広島県,和歌山県等,少なくない地域において,ジャージやジーンズ等,ラフな格好で保護者等と面談したり,入学式や卒業式等に臨む教員の存在が,問題となっている。大阪府羽曳野市が,教員の服装の乱れを問題視し,制服導入の是非を議論したのは,今から15年前の1996(平成8)年のことであった。「ジャージの先生のほうが“正装”している先生よりずっと実質的な教育をしていることが多い。」等と反発する教員がいる一方,保護者や市民から見れば,いつになれば教員は,TPOに適した「相応しい服装」を理解するのかという思いであろう。

 では,教員に対して服装を指示することは可能なのであろうか。公立学校の教職員は,地方公務員としての身分を有しており,地方公務員法その他が規定する服務義務に従うことが求められている。その一つに信用失墜行為の禁止(地方公務員法33条)がある。TPOを弁えず,常に,ジャージやジーンズ等のラフな格好で勤務することは,保護者や地域住民の信頼を失わせる可能性が高い。この点を根拠として,一定の範囲で服装の変更を指示することは,可能であるし,必要なことと言えるであろう。

 学校教育法は,「校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督する」と規定している(「包括的職務権限」37条4項)。ここでいう「監督」とは,相談に応じ,指導・助言・勧告し,必要に応じて指示,命令し,調停を行うことを意味する。校長は,職務上の上司として,この監督権を行使し,適切な服装の着用を命じることが可能であると考えて良い。

 校長の監督権が教員の服装に対してどこまで及ぶかが,訴訟の場で争われた事案が既に存在している。福岡県下で,公立学校の教員が,左胸に縦4.5×横7.5cm程度で「戦争を永久に放棄する 日本国憲法第9条」,背中の襟の下に縦4×横6.5cm程度で「せんそうはいやだニャー」と記されたポロシャツを着用し,服装で研究発表を行おうとして問題となった事案である。判決は,当該行為が,地方公務員法が禁止する政治的行為とまではいえないとしつつも,政治的な色彩を帯びた行為であったことは否定できず,教育公務員としての政治的中立性に疑義が生じることが懸念される場合に該当するとして,校長が発した職務命令の合理性を肯定している(福岡地方裁判所小倉支部判決平成12年7月13日)。



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◇ 学校経営の視点から ◇

校長自身の姿を振り返る(一)
教職教育開発センター客員研究員 田部井洋文

 先月号では、「校長力としての3C」と題して、コーチング、コーディネイト、コミュニケーションが学校経営上重要であることについて簡単に触れました。これら3Cの推進状況はいかかでしょうか。

 さて、各学校ではPDCAサイクルに基づき、平成23年度の教育諸実践や組織運営に対する年度末評価(学校評価)の準備が進められていることと思います。校長は、評価に資する諸調査の集計・分析をし、評価基準を明確にした内部(自己)評価の充実を図り、それを受けて学校関係者評価を「厳しい指摘」も受け入れて実施し、これらを総合して中期計画の中での次年度ビジョンの骨格をまず自らで明確に描く、このようなスケジュールを考えていることと思います。

 そこで、今月号と来月号では、このような学校評価を実施する前に、経営者としての自身の姿を振り返るためにいくつかの観点を示したいと思います。チェックしてみてください。

(1)年度当初に経営ビジョンを校内外に明確に示されたでしょうか。
「ビジョン」の内容・質で教職員をリードできることが重要です。それも1年単位ではなく、「3ケ年計画の中の、今年1年のビジョン」として示されることが必要だと思っています。また、保護者・地域との連携は、ビジョンの分かりやすい説明に基づいた、明確な行動提起・協力依頼によって初めて可能になるものです。

(2)教職員の意欲喚起のために自分はどんなことをしてきましたか。
服務監督に関する指示が大部分だったということはないでしようか。真摯に教育の本質を語る確かな会話の時間・場面を教職員は求めています。

(3)何事にも前例踏襲でなく、新しい発想をもって対処したことはどんな事でしたか。
現在の学校教育をめぐる変化の激しさは、前年度と同じようにやることでは目的が達成できないことがたくさん出てきています。2年目あるいは3年目の校長として、発想を転換して取り組んだことはどんなことだったでしょうか。

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◇ 今月のおすすめ書籍 ◇

〜楽しく仕事ができる文房具活用法〜
「仕事によく効く 魔法の文房具」
 土橋 正著 東京書籍 1600円(税別)

学校は学期末。超多忙な日々をお過ごしのことと思います。この時期を乗り切ればちょっと一息ですね。新年を迎えることもあり、日頃の仕事のやり方を見つめ直す良い機会かもしれません。例えば、身の回りにある「文房具」から―。

不思議なことに機能性とデザイン性を兼ね備えた文房具を手にすると、気が乗らない仕事もはかどった経験はありませんか。本書は、著者の体験をもとに文房具101アイテムを「発想」「記録」「整理」「事務作業」「ツール」の五つのカテゴリーに分けて取り上げ、機能性、使い心地等を解説します。

ペン、ノート、付箋、手帳、ファイル、ホチキスなど、誰でも使う文房具の中でもひと味違うものが写真付きで並んでいます。製品自体のアイデアやクオリティにも感心しますが、それらをどう活用すれば仕事のパファーマンスが向上するかまで踏み込んだ著者の解説に本書の特徴があります。なかでも、個人的には第3章「整理」の「ToDoツール」が参考になりました。

複数の仕事にかかっていると、Aの仕事にかかっていても不意にBの仕事のことを思いついたりして、Aに集中できないことがよくあります。しかし、今日の「ToDo(すべきこと)」事項と順番、時間等をメモし管理することで、不安はなくなり仕事そのものに集中できると言い、その作業に最適なメモ帳や付箋等が「ToDoツール」として紹介されています。文房具と表裏一体となった「仕事術」が見えてくるのです。店頭ではあまり見かけない文房具もありますが、電話番号やURL等問合せ先が一覧になっているのでご心配なく。「文房具なんて、どれも同じ」なんて言わずに「魔法」にかかってみるのも楽しいのではないでしょうか。 (関)

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