カモミールnetマガジン バックナンバー(ダイジェスト版)

 2013年2月号 

◆ 目次 ◆ ----------------------------------------------------------------------

(1) 所長だより
(2) 教育時事アラカルト
(3) 学校経営の視点から

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◇ 所長だより ◇

ICTを有効に活用した授業(その1)
教職教育開発センター所長   吉崎静夫

 先月号に続いて、「金沢市立小坂小学校」の実践について書いてみます。今月号と来月号において、ICTを有効に活用した授業実践を一つずつ取り上げてみます。

 今回の事例は、4年3組で実践された英語科「Where’s Takashi ?」という授業でした。なお、その授業は、杉本先生(学級担任)と武田先生(English Teacher)とのT・ Tで行なわれました。ご存知のように、金沢市は「英語教育特区」に指定されて、小学校1年生から英語教育が行なわれています。そして、Sounds Goodという英語学習のための独自の副読本が金沢市教育委員会によって作成されています。

 本時では、子どもたちにとって親しみのある学校の先生がどこにいるかを尋ね合いながら、”Where’s ○○?” “He is in the△△?”といった会話練習をすることが主な学習活動でした。いわゆる、このような「かくれんぼゲーム」は、子どもたちが話したくなるような、必要感のある英会話練習であり、とても魅力的な活動だといえます。

 この活動において、電子黒板が有効に活用されていました。まず、学校の先生がいる場所が英語と絵で電子黒板に提示され、子どもたちは授業者に続いて、それぞれの場所(gym, music room, computer room, class room, playgroundなど8カ所)をみんなで発音練習していました。なお、おもしろいことに「わからない(Sorry)」というカードもありました。そして、それぞれの子どもには、これらのカードの1枚が手渡されました。

 次に、学校の8名の先生が「どこにいるかを英語でたずねる」活動をクラスのみんなで夢中になって行なっていました。”Hello! Where’s ○○先生?” “He (She) is in the△△?” / Sorry” “Oh, I see. Thank you. Goodbye.”というわけです。

 最後に、全体で答え合わせをしました。その際、それぞれの先生の写真とその場所(英語)が大きく電子黒板に映し出されました。正解した子どもは歓声をあげていました。まさに、電子黒板というICTがうまいタイミングで、実に有効に使われていました。

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◇ 教育時事アラカルト ◇

学校名のブランド性
教職教育開発センター教授  坂田 仰

 校名については,各地に類似した名称を有する学校が少なからず存在している。私立学校の場合,その名称がブランド化し,独占使用について,不正競争防止法等を根拠に司法の場で争う例まで見られるようになってきた。広島県呉市において私立学校が,著名な校名である「青山学院」という名称を用いることが許されるかが争われた事案である(東京地方裁判所判決平成13年7月19日)。

 不正競争防止法は,「事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため,不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ,もって国民経済の健全な発展に寄与すること」を目的とした法律である。不正競争防止法は,利潤追求を前提とする「営業」の概念を使用していることから,「私立学校については公費の補助なくして事業を行い得ないことから,その経営は経済上の収支決算の上に立って行われる事業ではなく「営業」に当たらない」とし,そもそも不正競争防止法自体の適用がないとする考え方も成立し得る。

 しかし,判決は,「私立学校を経営する主体である学校法人が営利事業を目的とする商人でないことは,社会通念上明らかなところである」としつつ,不正競争防止法にいう「営業」は,「単に営利を目的とする場合のみならず,広く経済上その収支計算の上に立って行われる事業をも含む」ものであり,「国や地方公共団体からの補助金の収入をも含んだ収支計算であっても,営業に該当する旨の判断を妨げるものではない」として,その適用を支持している。裁判所の傾向としても,学校あるいは学校名のブランド化を容認する傾向にあるということであろうか。

 ただ,判決は,「青山学院」という名称の独占使用は認めたものの,損害賠償責任についてはいわゆる「グッドウィル」理論に基づき消極的な判断を示した。グッドウィル理論とは,類似名称の使用により,「著名商品等表示としての原告名称の識別力が希釈化」した場合に限りその損害を認定するいう考え方である。呉青山学院事件では,「具体的な損害が生じたとまでは,いまだ認めることはできない」とされ,最終的に,将来に向けた名称使用の差止めだけが認められている。

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◇ 学校経営の視点から ◇

担任の学級経営力を育てる校長に (5)
・・・「子ども一人一人にかかわり、育てる」・・・
教職教育開発センター客員研究員 田部井洋文

 現代の子どもたちは、家庭においては生活体験が、地域社会においては地域行事等を通した集団体験が非常に少なくなってしまっている。もはや、全ての子どもたちが集団生活を体験できるのは学校・学級ということになっている。そのため、集団体験のできる学級集団の育成に力を注ぐことが学校経営の観点からも重要となっている。

では、集団体験の効果とは何であろうか。次のように考えることはできないだろうか。

 @集団での生活を体験することにより、ルールや人との対応の仕方、即ち、人間関係の創り方、維持の仕方を学ぶことができるようになる。

 A他人との関わりを通して、「自分は自分」と言う意識を持つことができるようになる。自分のことに気付くことができるようになる。

 B集団には一定の規範がある。その規範に従い自分の欲求を抑制しなければ、内なる欲求も満たすことができない。よって、ソーシャルスキルを身に付けることができるようになる。

 C集団での生活を体験することにより、この場面では自分ならどうするか、そのようにする自分は望ましいのか、といった「自分を判断する自分」を育てることができるようになる。

ここでは、これらを集団体験の効果としたい。そして今、子どもたちの育ちに強く求められている内容でもあるとしたい。こう考えると、学級経営力とは、学級集団での活動や生活を通して、一人一人の子どもたちが現在強く求められている上記のような内容を自ら身に付けていくことができるようになる担任の指導力、人間力であると言える。

このような効果を一人一人の子どもが身に付けることができるようになるには、まず担任は子どもをよく知ることが肝心である。一人一人がどんな欲求、目標を持っているかを把握し、次にその実現のためには学級全体の取り組みとの関係をどのように調整していったらよいか、学級目標の実現とのギャップを小さくしていく手立てを子どもたちと共に考えていくようにしていくことである。また、担任と個々の子ども、子どもたち同士の望ましい関係(つながり)を創りだしていかなければならないが、そのためには次のことが大切になると考えている。

一つは、一人一人の子どもの欲求、思いを知るための方法を確保すること。交換日記や、雑談時間の確保、話しかけやすい担任の雰囲気づくりなどいろいろと工夫したいところである。

二つ目は、一人一人を認めるようにすること。これは、教科の成績や生活態度を他の児童と相対的に比較して認知しているということではなく、一人の人間としてできるだけ多くの視点からその子どもを認知し、その子ならではの「いい面」をたくさん知るということである。

三つ目は、その子の「願い」「いい面」などをその子に返していくこと。いろいろな場面を通して、伝えていくこと。例えば、朝の挨拶時においても「おはよう。ところでこの前のサッカーの試合はどうだった、勝ったかい?」「この前転んだ時の怪我はどうした?」など。どの子どもも「自分は先生に気に留められている、認められている」と感じさせる配慮が大事である。 

個々の子どもの願いやいい面は、他の子どもにも紹介し、子ども同士がつながりを創りだせるようにしていくことも重要である。
校長は各学級の現状を適時担任と共に把握・分析し、集団体験の機会を通して子ども一人一人を育てることのできる学級となるよう担任への指導・助言を継続的に行うようにしたい。

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