平塚らいてう賞

学校法人 日本女子大学

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第1回(2005年度) 平塚らいてう賞

顕彰:受賞スピーチ

「人身売買禁止ネットワーク」 共同代表者 吉田容子氏

顕彰 「人身売買禁止ネットワーク」 共同代表者 吉田容子氏

 全国のNGO(女性団体、人権団体、被害者支援シェルターなど)や法律家、研究者が連帯したネットワークであるJNATIP(Japan Network Against Trafficking in Persons)は、日本における人身売買の実態を明らかにし、被害の防止、被害者の救済と保護、加害者の処罰等を盛り込んだ実効性ある法律(人身売買禁止法:仮称)の制定を目指し、2003年10月に設立された。 これまで人身売買(トラフィッキング)、女性に対する暴力、滞日外国人の人権擁護などの問題に取り組み、29のNGO団体と150人の個人が参加している。

  人身売買については、ここ2・3年、メディアで取り上げられるようになったが、この目的は搾取であり、手段は暴行、脅迫、金銭の提供により、人をリクルートして移送してくる。

  1980年代、また遅くとも90年代の日本は、人身売買の受け入れ国でありながら、社会における認識がなかった。政府においてもオーバースティ、不法就労や性産業に携わる外国人に対し、被害にあわれた方を被害者と認識せず、国の風紀を乱すという認識により、国外退去をさせていた。

  現在は、国連の規定書を受けて、ようやく政府も被害者に対する扱いを認識して、またなぜ日本が、その受け入れ国であり続けるのかという根本的問題にも取り組まなければならなくなってきた。

  JNATIPの最終目標は、人権侵害をなくすことであるが、そのための有効な手段として、法律をつくるべきだと考えている。昨年の刑法や入管法、刑事訴訟法の改正により、加害者の処罰は整っているが、被害者の保護、さらに被害の防止に関しては、まだ法律制度が無いため、これらを作らなければならないと考えている。 そのために、個々のケーススタディだけでない、人身売買に関する様々なデータ収集を行った。そして法案のドラフトをつくり、3つの政党に提出し、一般向けにキャンペーンを実施したが、昨年6月の刑法の改正により、様々なメディアの報道が急激に減ったことも明らかになった。

  私達は、今こそ正念場であり、政府の制度が整い、日本社会の被害者保護に対する認識もできてきたが、まだ十分でなく、その部分を、私達がさらに実質的に被害者の保護、そして被害防止人身売買が行われない社会をつくりあげていくことが必要であり、そのための活動が求められている。

  そして今回、受賞したことをこれからの活動の励みとしたい。

2006年2月11日

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