過去の受賞者・受賞団体

prize€history

過去の受賞者・受賞団体

※所属、役職等は受賞当時のものです。

第16回(2022年度)受賞者・受賞団体

顕彰

婦人国際平和自由連盟(WILPF)日本支部

顕彰

池上 清子 氏
(長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科 客員教授)

奨励

元橋 利恵 氏
(大阪大学人間科学研究科 招へい研究員)

顕彰

婦人国際平和自由連盟(WILPF)日本支部
研究テーマ 婦人国際平和自由連盟(WILPF)日本支部の100年の歩み-ジェンダー平等と平和の構築-
受賞理由

 当該応募団体は、世界で最も早く、戦争によることのない、人類の世界平和を望む女性によって結成された、世界婦人平和自由連盟の日本支部として、1921年に、婦人平和協会の名称で設立されて以来、101年の星霜を重ねてきた。政治・思想・宗教的立場の相違を超え、長きにわたり世界平和、男女共同参画、ジェンダー平等の実現をスローガンとした活動を続け、その時その時に応じたテーマに取り組む研究活動を行いながら、社会の持続性を探求し続けてきた。
 会員の多くは、成瀬仁蔵、新渡戸稲造らの薫陶を受けた日本女子大学の卒業生であったが、支部や会員の活動は高い評価を受けるとともに、常に現前の課題へのコミットメントを行っている。また、この一貫した取り組みは、その持続性において評価しうるものであり、これまで重ねられた努力は、「平塚らいてう」賞として顕彰するに十二分に値する。
 今後は、活動を引き継ぐ次世代を育成し、社会への発信力をさらに培い、活動の輪をますます広げていくことを希望する。


顕彰

池上 清子 氏
(長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科 客員教授)
研究テーマ 開発途上国での母子健康手帳を使った母子保健の推進とその評価
受賞理由

 池上氏は、長期にわたり国連の国際公務員として国内外で活動を続け、リプロダクティブ・ヘルスに取り組み、近年は、世界平和と男女共同参画社会の実現を担う次世代の研究者、実務家を育てる努力を重ねてきた。国際NGO、プラン・インターナショナル・ジャパンの理事長として、子どもの権利を尊重し、途上国の女の子たちを支援するBecause I am a Girlキャンペーンを推進、SDGsの掲げる「誰一人取り残されない社会」を作りあげるために、その裏付けとなる科学的なデータの収集を行う活動を実践している。
 今回の活動のテーマは「開発途上国での母子健康手帳を使った母子保健の推進とその評価」である。実践例は、バングラディシュの農村で母子健康手帳、モバイルヘルスを用いての母子保健の推進活動であり、その結果も報告された。それに拠れば、妊婦健診の受診率が向上し、分娩・健診施設が改善され、新生児死亡率が低減したことが認められる。池上氏の目指すものは、女性の能力を強化し、女性自身と子どもの健康を増進させる活動である。
 今までの国際社会への貢献に加え、世界平和、男女共同参画社会の実現を俯瞰的に捉えるとともに、実現可能な活動の実行とその実証研究を行い、それをもとにさらに活動を発展させるという優れた実践方法を高く評価し、顕彰にふさわしいと判断するものである。


奨励

元橋 利恵 氏
(大阪大学人間科学研究科 招へい研究員)
研究テーマ 日本におけるマザリングの包括的研究
受賞理由

 今回提出された主要な研究成果は、『母性の抑圧と抵抗-ケアの倫理を通して考える戦略的母性主義-』(晃洋書房、2021年2月)である。本書は、担い手の多くが女性であるがゆえに非政治的なものとみなされ、公的社会において重要な価値を持たないとされてきたケアの営みが、じつは社会の基盤を作る重要なものであると高く評価するケア・フェミニズムの考え方を整理し、対象者との間に深刻な葛藤を抱えながらケアの遂行に努力するケアの担い手の経験や思考の中にこそ、普遍的価値があり既存社会を変革していく潜在力があると示した。ケアの担い手をエンパワメントし男女共同参画社会の実現に資すると期待されることから、受賞に値すると判断した。
 マザリングとは、ケア・フェミニズムで母が行うケアの活動に焦点を当てる用語である。母親業の実践によって培われる「母的思考」の持ち主は、狭義の「母」に限らない。今後、元橋氏は母親運動に注目する一方、インターセクショナリティーの視点を導入し、母親業を行う男性や福祉職員などの経験にも着目して検討を進めることを目指している。戦後の母親運動には平塚らいてうも関わっており、そこに新たな視点からの検討が加えられることも期待したい。


第16回 選考委員(五十音順)


  1. 坂本 清恵  〔日本女子大学 現代女性キャリア研究所所長〕
  2. 差波 亜紀子 〔日本女子大学 文学部 史学科教授〕
  3. 篠原 聡子  〔選考委員長/日本女子大学学長〕
  4. 高野 晴代  〔一般社団法人日本女子大学教育文化振興桜楓会理事長、日本女子大学名誉教授〕

※所属、役職等は受賞当時のものです。

第15回(2019年度)受賞者・受賞団体

特別

差波 亜紀子 氏
(法政大学 文学部 兼任講師)

奨励

安野 直 氏
(早稲田大学 文学研究科 博士後期課程)

奨励

五十嵐 舞 氏
(一橋大学大学院 社会学研究科 博士後期課程)

特別

差波 亜紀子 氏
(法政大学文学部 兼任講師)
研究テーマ 近代日本の女性知識層の広がりと社会的役割を明らかにすること
受賞理由

 今回提出された具体的な研究成果は、平塚らいてうの評伝『日本史リブレット人093 平塚らいてう-信じる道を歩み続けた婦人運動家』(山川出版社、2019年2月)である。

 既存研究を踏まえつつ、一般読者向けに、らいてうの全生涯を簡明に紹介することを企図した良書である。本文の各所に、適切な頭注が付され、疑問を残さず読み進められるように配慮されている。新出資料の発掘や新視点から論ずることをめざした書ではない点がやや物足りないが、逆に、らいてうの思想や活動の分析を専らにした研究では言及されてこなかった興味深い記述も多々みられる。例えば、らいてうの父が編み物上手で、幼い頃、手袋を編んでくれたエピソードなど、進歩的で恵まれた生育環境を髣髴とさせる。

 ジェンダーギャップが153ヵ国中121位という現代日本において、女性解放に力を尽くしたらいてうの軌跡を知らしめる本書が遍く読まれ、現状打破に繋がることを期待したい。


奨励

安野 直 氏
(早稲田大学 文学研究科 博士後期課程)
研究テーマ ロシアにおける性的少数者のナラティブの構築
-レズビアンとトランスジェンダーを中心に
受賞理由

 先進国を中心にLGBTQの権利を認める動きが急速に起きている。男性と女性という二元論的な区別を超えて、女性あるいは男性の中の多様性を認め、それを理解することは、ジェンダーをより深く理解し、そこから解放されるために欠かせない作業である。しかし、性的少数者に関する実態はそれほど明らかにされているわけではない。また、社会主義の国では性の多様性がどのように受け入れられ、語られてきたのか。それが経済の発展とともに、どのように変遷してきたのかについての研究も少ない。本研究はロシア文学の作品を通して性的マイノリティーがどのように語られ、またそのナラティブがどのように変遷していたのかを分析している。テーマの先進性と今後の発展性を評価し、受賞に値するとの判断に至った。

          

奨励

五十嵐 舞 氏
(一橋大学大学院 社会学研究科 博士後期課程)
研究テーマ 9/11以降の性暴力をめぐる言説とトニ・モリスンのフェミニズム
受賞理由

 本研究は、近年のマイノリティについてのさまざまな議論や権利の主張のなかで、原点ともいえる黒人女性作家のトニ・モリスンの作品を中心として論じたものである。五十嵐氏は9/11の惨事においても白人中心の情報が正当化されている現実を踏まえてアメリカの黒人に対する意識や差別を浮き彫りにし、マイノリティに対する蔑視や性暴力といった現代社会にもなお存在する問題を明らかにすることを目的としている。

 今後の研究においては、五十嵐氏はトニ・モリスンの9/11以降の作品をとおして、彼女の収集した史資料の調査から性暴力やそれに対する過去の議論や社会運動等を明らかにし、現代社会における女性に関する問題をさまざまな角度から検討してモリスン作品の意義と彼女のフェミニズムを明らかにしていくことを目指している。

 以上の五十嵐氏の研究は、これまでの発表や論文をさらに進展させる可能性を示唆しており、らいてうの目指した女性解放に関する研究に該当するものである。


第15回 選考委員


  1. 蟻川 芳子  〔学校法人日本女子大学理事長、日本女子大学名誉教授、一般社団法人日本女子大学教育文化振興桜楓会理事長〕
  2. 出渕 敬子  〔WILPF(婦人国際平和自由連盟)日本支部副会長、日本女子大学名誉教授〕
  3. 倉田 宏子  〔城西国際大学客員教授、日本女子大学名誉教授〕
  4. 佐々井 啓  〔アジア地区家政学会(ARAHE)会長、日本女子大学名誉教授〕
  5. 大沢 真知子 〔日本女子大学 現代女性キャリア研究所所長〕

※所属、役職等は受賞当時のものです。

第14回(2018年度)受賞者・受賞団体

顕彰

青木 千賀子 氏
(日本大学 国際関係学部 特任教授)

顕彰

三具 淳子 氏
(日本女子大学現代女性キャリア研究所 客員研究員)

顕彰

青木 千賀子 氏
(日本大学 国際関係学部 特任教授)
研究テーマ ネパールのダリット女性の地位向上とマイクロファイナンスの活動
講評

 青木氏は、ネパールの「ダリット」と呼ばれるカースト制度の最下層に置かれた被差別集団の女性たちの地位向上を目的として、2007年から現地調査をおこなってきた。彼女たちの社会的な差別構造を解消するためには、女性グループへのマイクロファイナンス(小口金融)活動を実践することであるとし、女性グループへの聞き取り調査を経て養鶏、養豚、店の開設等の所得創出のための活動を開始して、差別解消、社会規範の見直しのために貢献した。

 青木氏の多数の論文や著書『ネパールの女性グループによるマイクロファイナンスの活動実態―ソーシャルキャピタルと社会開発』(日本評論社、2013年8月)には、ネパールでなされた活動が詳細に報告されている。これらの著作から、単に発展途上国の実情の調査や文献資料調査にとどまっているのではなく、青木氏が女性の自立に向けて手を差し伸べ、ともに社会的な差別を解消すべく努力したことが読み取れる。このような青木氏の活動は、らいてうの目指した女性解放や世界平和を現代に実践しているといえ、らいてう賞に最もふさわしいものである。


顕彰

三具 淳子 氏
(日本女子大学現代女性キャリア研究所 客員研究員)
研究テーマ 夫婦の平等な関係構築と妻の就業変容との関係を動態的に探究すること。
講評

 女性の活躍が求められているとはいうものの、女性が結婚や出産後も働き続けることは容易ではない。三具氏の著書『妻の就労で夫婦関係はいかに変化するのか』(ミネルヴァ書房、2018年5月)は、なぜ多くの女性は結婚や出産で職場を去らなければならなかったのか、そのことによって夫婦関係にどのような変化がもたらされるのか、さらには、女性の再就職は夫婦関係をどのように変質させるのかということを、社会学の理論を使って分析したものである。

 三具氏は「性役割を受け入れることと夫婦の対等な関係は同時に成り立たない」という近代家族が内包する矛盾に対して、女性の再就職は矛盾に満ちた夫婦関係に対する女性の異議申し立てであり、稼得力をつけることで対等な関係を模索する女性たちの挑戦であると捉える。そして、量と質の両方の分析方法を用いて、その仮説を検証している。

 本研究は、今注目されている女性の学び直しと再就職に、新しい意味と解釈を加えたという点で高く評価されるべき研究書で、男女共同参画の視点から顕彰にふさわしいと判断した。

          

第14回 選考委員


  1. 蟻川 芳子  〔学校法人日本女子大学理事長、一般社団法人日本女子大学教育文化振興桜楓会理事長、日本女子大学名誉教授〕
  2. 出渕 敬子  〔WILPF(婦人国際平和自由連盟)日本支部会長、日本女子大学名誉教授〕
  3. 倉田 宏子  〔城西国際大学客員教授、日本女子大学名誉教授〕
  4. 佐々井 啓  〔国際家政学会(IFHE)会員、アジア地区家政学会(ARAHE)会長、日本女子大学名誉教授〕
  5. 大沢 真知子 〔日本女子大学 現代女性キャリア研究所所長〕

※所属、役職等は受賞当時のものです。

第13回(2017年度)受賞者・受賞団体

顕彰

中村 久司 氏

顕彰

佐久間 亜紀 氏
(慶應義塾大学 教職課程センター)

奨励

川口 かしみ 氏
(早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程)

顕彰

中村 久司 氏
研究テーマ シルビア・パンクハーストの女性解放と国際平和活動の研究
講評

 今回の応募作品の中で、ひときわ光っていたものは中村久司氏の著書であった。内容は男女平等の思想に目覚め、女性参政権の獲得に献身的な努力をし、ついにそれを実現させたパンクハースト母娘(エメリン、クリスタベル、シルビア)の思想と行動を具体的に描き、英国の女性たちの理想実現の激しい闘いを伝えている。

            

 中村氏の方法はサフラジェットたちの努力と苦闘の跡をしっかりと把握するために、ロンドンを始め英国各地の歴史を実際に訪れて調査・記録し、史実を尊重し説得力を生み出したものである。読者は自らもその場に居合わせたかのように、女性参政権運動が社会を揺るがせた大波小波を見る思いがする。著者の見方は巨視的であると同時に微視的で、さすがに歴史家の優れた洞察眼が発揮されている。

          

 中村氏は勤務していた税関を退職後、英国の大学院で調査研究、博士号を得た。英国に永住し、歴史的・社会的・地理的な視野から同国の民主主義を研究し続けており、再び新著が書かれる日を待ちたいものである。


顕彰

佐久間 亜紀 氏
(慶應義塾大学 教職課程センター)
研究テーマ 男女共同参画社会を実現するための教師をどう育てるか、その研究と実践
講評

 男女共同参画社会の実現には、教育が重要であり、教員の果たす役割が大きいことは言うまでもない。しかし、日本では教員教育を改革改善するための学術研究の歴史は浅く、ジェンダーの視点からの研究蓄積はさらに乏しい。

            

 こうした状況下で、応募者が刊行された『アメリカ教師教育史研究―教職の女性化と専門職化の相克』(東京大学出版会、2017年)は、米国で何故教職が女性職となり、何故未だに教師の社会的地位が低く低賃金が続いているのかを、新資料による裏付けとジェンダーの観点から明らかにした画期的な研究成果である。米国では公的な教師養成機関は19世紀初頭に女子校として設立され、そこで教鞭を取ったのは女性であった。この女子校が日本の女子師範学校設立に大きな影響を与えたという基礎的史実も明らかにされた。

          

 本書の研究は、このように女性史・教育史・教師教育史を架橋する重要な意義を持つ。また、教師の社会的待遇を改善せず、カリキュラム改革を迫るだけの政策を約百年続けてきた米国教育史の検証は、日本の教師教育にも警鐘を鳴らし、その改革に大きな示唆を与えるだけでなく、男女共同参画や女性解放にも資すること大であろうと期待される。


奨励

川口 かしみ 氏
(早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程)
研究テーマ 憲法上のジェンダー平等規定とその解釈 -憲法24条の再定位
講評

 日本は今大きな時代の転換点を迎えている。これからの社会では、より多くの女性が妻や母としてだけではなく、個人として自己実現し、自己のアイデンティティを確立する時代になる。他方、現実には憲法24条改正草案が提出され、女性の権利を制約し、家族のあり方や性別役割を固定化するような法律案が議論されている。

        

 そのような時代背景の中で、個人としての女性を尊重しつつ、憲法24条を再解釈することで、私的領域における国家の不介入を基礎とする従来の憲法の枠組みを維持しながら夫婦間の平等保障を可能とし、社会のジェンダー平等実現を実現し、家庭内でのジェンダー平等を実現するための制度構築について考察することを目的とする本研究は、時宜にかなったものであると同時に、賞の趣旨に合致したものであり、奨励賞に値するものと判断した。


第13回 選考委員


  1. 蟻川 芳子 〔学校法人日本女子大学理事長代行、一般社団法人日本女子大学教育文化振興桜楓会理事長、日本女子大学名誉教授〕
  2. 出淵 敬子 〔WILPF(婦人国際平和自由連盟)日本支部副会長、日本女子大学名誉教授〕
  3. 倉田 宏子 〔城西国際大学客員教授、日本女子大学名誉教授〕
  4. 大沢 真知子〔日本女子大学 現代女性キャリア研究所所長〕

※所属、役職等は受賞当時のものです。

第12回(2016年度)受賞者・受賞団体

顕彰

日本女性外科医会

特別

NPO法人 平塚らいてうの会

顕彰

日本女性外科医会
研究テーマ 日本医学会分科会における男女共同参画を目指したJAWSの活動
講評

 最近の日本では医師国家試験の合格者の約3割が女性であり、外科医志望の女性も増えつつある。しかしその前途は厳しく、医師であり続けようとすれば、環境改善、育児支援、勤務形態の柔軟化、産後の復職支援などが必要になる。そのような立場にある女性外科医のワーク・ライフ・バランスをサポートし、継続就労を推進するために、2009(平成21)年「日本女性外科医会」(略称JAWS)を立ち上げた。

            

 以上は代表世話人冨澤康子氏が書いたものの要約であるが、このような信念ともいえる考え方が核心にあるからこそ、日本女性外科医会が困難を乗り越えて改革を進めた実績があると思われる。その着眼と工夫とは新鮮で人間社会の現実に根差しているものであると同時に、非常な活力と説得力を持つ。平塚らいてうが希求した男女共同参画を目指す活動は、顕彰にふさわしい。

          

特別

NPO法人 平塚らいてうの会
研究テーマ 『平塚らいてうの会紀要』(2008~)によるらいてう研究成果の発表
講評

 2001(平成13)年に発足した「NPO法人平塚らいてうの会」は、『ニュース』の発行や「らいてう講座」の実施、『青鞜』原本の蒐集、『平塚らいてうの会紀要』の刊行などを通して、らいてう研究の促進及びらいてうの思想の普及に多大な尽力をされた。『紀要』に掲載された未発表資料は貴重であり、とりわけ従来不分明であった戦時中の思想的模索及び戦後の平和思想の解明は、研究を大きく進展させた。

        

 また、2006(平成18)年には信州の上田に「らいてうの家」を開設し、本年で10周年を迎える。この記念施設の運営を通して、らいてうの存在を改めて世に知らしめ、らいてうのめざした平和社会を現代に実現させるべく活動してきた功績はきわめて大きい。

        

 このような際立った功業に対し、「特別」を贈呈することとした。


第12回 選考委員


  1. 佐藤 和人 [日本女子大学学長]
  2. 出淵 敬子 [WILPF(婦人国際平和自由連盟)日本支部副会長、日本女子大学名誉教授]
  3. 倉田 宏子 [城西国際大学客員教授、日本女子大学名誉教授]
  4. 羽田 澄子 [記録映画作家]
  5. 大沢 真知子 [日本女子大学 現代女性キャリア研究所所長]

※所属、役職等は受賞当時のものです。

第11回(2015年度)

顕彰

日本女子大学 平塚らいてう研究会

奨励

小川 真理子 氏
(お茶の水女子大学 基幹研究院)

顕彰

日本女子大学 平塚らいてう研究会
研究テーマ 平塚らいてうの著作や行動を研究し、今後の女性のあり方を考える
講評

日本女子大学平塚らいてう研究会は、結成以来24年の長きにわたり、掲げた研究テーマを弛まず真摯に追求し、らいてう研究を着実に進展させた。
『らいてうを学ぶなかで』1・2・3号の刊行を通して、らいてう及び『青鞜』に関わる新資料等を公開し、日本女子大学校の教育及び創立者成瀬仁蔵がらいてうに与えた影響なども浮き彫りにした。また『青鞜』の先駆けともいうべき日本女子大学校・桜楓会機関紙『家庭週報』の年表刊行、さらに『家庭週報』の前身と位置づけられる『女子大學週報』の翻刻を上梓し、『青鞜』誕生の背景に大きく鍬を入れた。
なお、らいてうの同窓会(桜楓会)への復帰実現にも多大な尽力をされた。


奨励

小川 真理子 氏
(お茶の水女子大学 基幹研究院)
研究テーマ DV被害者支援と民間シェルターに関する国際比較研究
講評

小川氏はすでに2007年提出の修士論文で「日本におけるドメステイック・バイオレンス被害者支援を行う民間シェルターの考察-女性たちの市民活動としての民間シェルター活動の可能性」について書いているように、以後一貫してフェミニズムの視点から、DVと草の根運動などによる被害者支援の問題を研究している。最初の民間シェルターができてから20年余、DV防止法や自治体等の関与も徐々に実現してきたが、シェルターの必要性は現在も続いている。それどころか、DVの被害者は増える傾向さえみられる。
このような現代日本の状況をアメリカ、カナダなどと比較し、被害者支援はどうあるべきかを模索した貴重な記録であり、今後DVと民間シェルターの問題にどのように対処すべきか真剣に考えさせられる。平塚らいてう賞にふさわしい業績である。


第11回 選考委員


  1. 佐藤 和人 [日本女子大学学長]
  2. 出淵 敬子 [WILPF(婦人国際平和自由連盟)日本支部副会長、日本女子大学名誉教授]
  3. 倉田 宏子 [城西国際大学客員教授、日本女子大学名誉教授]
  4. 羽田 澄子 [記録映画作家]
  5. 大沢 真知子 [日本女子大学 現代女性キャリア研究所所長]

※所属、役職等は受賞当時のものです。

第10回(2014年度)

奨励

岩田 三枝子 氏
(東京基督教大学 大学院 神学研究科 神学専攻=博士後期課程=)

奨励

岩田 三枝子 氏
(東京基督教大学 大学院 神学研究科 神学専攻=博士後期課程=)
研究テーマ 大正期における婦人運動-覚醒婦人協会と賀川ハルを中心に
講評

明治・大正・昭和期を通じて、社会事業家・思想家として著名な賀川豊彦の妻、賀川ハルに焦点をおいた研究である。女性の解放や女性労働の改善・協同組合の必要性を主張した雑誌『覚醒婦人』の発行や講演会などを通じて、覚醒婦人協会の活動を明らかにしている。

従来、注目されていなかった協会への着眼、その中心となったハルの信仰や思想を対象とすることで、大正期の女性運動に新しい展望を与えた。同時期の欧米の女性解放の動向や日本の女性活動家、市川房枝、平塚らいてうらとの関係などの解明も期待できる。


第10回 選考委員


  1. 佐藤 和人 [日本女子大学学長]
  2. 中嶌 邦  [日本女子大学名誉教授]
  3. 出淵 敬子 [WILPF(婦人国際平和自由連盟)日本支部副会長、日本女子大学名誉教授]
  4. 羽田 澄子 [記録映画作家]
  5. 大沢 真知子 [日本女子大学 現代女性キャリア研究所所長]

※所属、役職等は受賞当時のものです。

第9回(2013年度)

顕彰

肖 霞 氏
(中華人民共和国 山東大学 外国語学院 日本語科 教授)

奨励

高橋 順子 氏
(日本女子大学 人間社会学部現代社会学科 助教)

特別

東日本大震災女性支援ネットワーク
(共同代表:竹信 三恵子 氏・中島 明子 氏)

顕彰

肖 霞 氏
中華人民共和国 山東大学 外国語学院 日本語科 教授)
研究テーマ

元始 女性は太陽であった『青鞜』及びその女性研究

講評

平塚らいてう賞に初めて、中国(山東大学)の方が応募された。雑誌『青鞜』を手がかりに近代日本の女性を対象とする研究で、中国語版『元始女性是太陽 (*1) -“青鞜"及其女性研究』が山東人民出版社より2013年6月刊行された。全9章428ぺージに及ぶ大冊である。
中国において女性研究は未だ充分に広がっておらず、さらに国際比較の視点はこれからの課題であり、中・韓・日の女性史研究の交流もようやく始まろうとしている段階にある。このような時期に本書が出版され、平塚らいてう賞に応募されたことは貴重であるといえよう。
本書は『青鞜』をめぐる社会的状況の説明に若干の問題はあるが、課題別に資料や研究や文献が丁寧に紹介・検討されており、付として、『青鞜』年表及び目次一覧、詳細な参考文献が付けられている。
肖氏も「『青鞜』が登場して百年以来中国初めて全面的な研究だと思われる」と言われており、今後本書を基礎として中国国内に研究が大きく広がるものと思われる。
今後は、本書の緒言で言及されている「中国女性解放と日本のそれとの関係」や「世界の女性解放運動に与えた貢献」などの諸課題がより深められることを望みたい。


奨励

高橋 順子 氏
(日本女子大学 人間社会学部現代社会学科 助教)
研究テーマ 近現代沖縄社会における「新しい女たち」 一沖縄初の女性校長砂川フユを中心に
講評

沖縄県初の女性校長砂川フユを中心に、近現代沖縄社会の「新しい女たち」の登場と活動を明らかにしようとしている。フユの学んだ沖縄県女子師範学校は、県内一の女子教育のエリート校であり、『青鞜』が読まれたり、沖縄研究に大きな足跡を残した著名な伊波普猷が招かれたりしている。
沖縄の女性たちの、特に第二次世界大戦後における米国占領下の実態と重ね合わせ、女性たちの新しい多様な活動を明らかにすることが期待される。


特別

東日本大震災女性支援ネットワーク
(共同代表:竹信 三恵子 氏・中島 明子 氏)
研究テーマ 東日本大震災で被災した女性たちのニーズが支援活動や復興過程に反映させられると共に、復興支援の諸政策にジェンダー・多様性への視点が組み込まれること

講評 東日本大震災で被災した女性たちのニーズが支援活動や復興過程に反映させられると共に、復興支援の諸政策にジェンダー・多様性への視点が組み込まれること

東日本大震災女性支援ネットワークのメンバーの方々は、3年間にわたり共同代表の竹信三恵子、中島明子両氏を中心として東日本大震災の被災者―特に女性に焦点を当て、復興支援活動を続けてきた。

その活動の特色は次のようなものである。

  1. 明確な目標と活動方針をもち、それに基づき活動を展開している。
  2. 復興過程におけるジェンダーおよび多様性の問題を直視し、できる限り女性や災害弱者の存在に注目し、問題解決を計ろうとしている。
    そのための人材育成の必要も視野にいれている。
  3. コミュニケーションを重んじ、ネットワーク内外で意見交換し、新しい復興支援のあり方を提案している。
  4. 視野を広く活動し国連や女性の人権団体とも交流している。
  5. 常に活動の成果をまとめ、チラシから単行本までさまざまな形で記録を残している。これらは現在のみでなく、将来の災害時にも参考となろう。

総じて言えば、このネットワークの方々は、災害支援をきっかけに多くのことを実践しながら学び、これまでにない新しい支援のありかたを経験を通して示唆している。平塚らいてうとは直接の関係はないが、以上の理由から「特別賞」に十分値すると選考委員全員が賛同した。


第9回 選考委員


  1. 佐藤 和人 [日本女子大学学長]
  2. 中嶌 邦  [日本女子大学名誉教授]
  3. 出淵 敬子 [WILPF(婦人国際平和自由連盟)日本支部副会長、日本女子大学名誉教授]
  4. 羽田 澄子 [記録映画作家]
  5. 大沢 真知子 [日本女子大学 現代女性キャリア研究所所長]

※所属、役職等は受賞当時のものです。

第8回(2012年度)

顕彰

秋山 佐和子 氏
歌誌 「玉ゆら」主宰、日本歌人クラブ中央幹事、現代歌人協会会員、日本文藝家協会会員

顕彰

秋山 佐和子 氏
歌誌 「玉ゆら」主宰、日本歌人クラブ中央幹事、現代歌人協会会員、日本文藝家協会会員
研究テーマ 「青鞜」と関わった歌人 原阿佐緒と三ヶ島葭子の歌と生の再検討
講評

平塚らいてう賞の第八回の顕彰は、秋山佐和子氏の「『青鞜』と関わった歌人原阿佐緒と三ヶ島葭子の歌と生の再検証」に差し上げることが決まった。選考委員会で一同賛同の即時一致をみた。
『青鞜』あるいは平塚らいてうに触れていることは勿論であるが、近代の女性歌人として著名ではあるが、さまざまに評価されてきた両歌人の生涯を追った 2冊の大著が主な受賞の対象である。
三ヶ島葭子については『歌ひつくさばゆるされむかも 歌人三ヶ島葭子の生涯』(TBSブリタニカ2002年 8月刊)があり、本書は第一回日本歌人クラブ評論賞を受賞している。この研究の過程でその親友の原阿佐緒に関心を寄せ、『原阿佐緒 うつし世に女と生れて』ミネルヴァ日本評伝選(ミネルヴァ書房 2012 年 4月刊)の近刊書となった。本書の出版は、新刊として、評論として、さまざまな短歌誌において、賞賛をともなって取り上げられている。
三ヶ島葭子は貧困と病弱と夫の女性関係の苦しみの中にあり、原阿佐緒は美貌ゆえのスキャンダルにまみれた女性として従来取り上げられてきた。しかし、秋山佐和子氏はこのような人物像を転換させたといえる。
それを可能にしたのは、一つは長年にわたる研究の成果である。先ず先行する長短さまざまな両歌人の研究や評価を参照するばかりでなく、膨大な資料を駆使し、周辺の人々との関連を追い、詳細な群像を浮かび上がらせている。さらに、『青鞜』に一千首余を発表した三ヶ島葭子、二〇四首を発表した原阿佐緒の短歌を中心に両歌人の歌を多く引用し説得性を高めている。それは筆者自身が歌人であるがゆえに、それぞれの歌の持つ情景をときに解説を加え読者に訴える叙述となっているからである。
両歌人に偏見を持たずに寄り添い、両者が歌人として内なる声に誠実に生ききった生涯を追う。それは平塚らいてうと重なり、現代に生きる我々にも読み応えのある著作となったと言えよう。


第8回 選考委員


  1. 蟻川 芳子 [日本女子大学学長]
  2. 中嶌 邦  [日本女子大学名誉教授]
  3. 出淵 敬子 [WILPF(婦人国際平和自由連盟)日本支部副会長、日本女子大学名誉教授]
  4. 羽田 澄子 [記録映画作家]
  5. 岩田 正美 [日本女子大学 現代女性キャリア研究所所長]

※所属、役職等は受賞当時のものです。

第7回(2011年度)

顕彰

ジャン・バーズリー (Jan Bardsley) 氏
(ノースカロライナ大学 チャペルヒル校 アジア研究学部 准教授)

顕彰

ジャン・バーズリー (Jan Bardsley) 氏
(ノースカロライナ大学 チャペルヒル校 アジア研究学部 准教授)
研究テーマ 平塚らいてう、青鞜、フェミニズム、現代文化、日米女性の交流
講評

平塚らいてう賞の創設以来、本年は第7回目になるが、第6回に続き英語で書かれた研究、平塚らいてうと「青鞜」についてのジャン・バーズリ-氏の研究に「らいてう賞」を差し上げることに選考委員会で衆議一決した。 平塚らいてうの作品が日本のみならず広く海外でも読まれ、研究されていることを証明するものであり、よろこばしいことである。
ジャン・バーズリ-氏の代表作はThe Bluestockings of Japan, New Woman Essays and Fiction from Seito, 1911-16(University of Michigan, Center for Japanese Studies, 2007) (『日本の「青鞜」:1911年から1916年までの「青鞜」の新しい女のエッセイとフィクション』)である。本書は1980年以来25年余りにわたる著者のらいてうと「青鞜」同人に関する綿密な調査・研究の成果であり、1989年カリフォルニア大学ロサンジェルス校に提出された博士論文を土台としている。バーズリ-氏はらいてうとその周囲にいた「青鞜」の11人の女性たち(野上弥生子や与謝野晶子を含む)のプロフィールを紹介し詳しいコメントをつけたあと、11人すべての女性たちの際立った特徴を示す作品を英訳し載せている。
これによって欧米の読者は、日本の初期フェミニズムがどのような歴史的、社会的背景のもとで生まれたかを著者の序文で知り、また実際の作品を通して彼女たちが感じ、悩み、考えていたことを知ることができる。たとえば、らいてうの有名な「元始 女性は太陽であった」というマニフェストを始め、タイトルをあげれば、「女性解放問題の解決」、「新しい女の道」、「人類の一員として男女は平等である」など、1910年代の5年間に「青鞜」同人たちが書いた言葉によってその主張が直接伝わってくるよう工夫され、著者のすぐれた選択眼がはたらいている。英訳も比較的読みやすい。
バーズリ-氏の長年にわたるらいてうと「青鞜」の研究から生み出された本書は、らいてう賞にまさにふさわしい業績である。


第7回 選考委員


  1. 蟻川 芳子 [日本女子大学学長]
  2. 中嶌 邦  [平塚らいてうの記録映画を上映する会会長]
  3. 出淵 敬子 [WILPF(婦人国際平和自由連盟)日本支部副会長]
  4. 羽田 澄子 [記録映画作家]
  5. 岩田 正美 [日本女子大学 現代女性キャリア研究所所長]

※所属、役職等は受賞当時のものです。

第6回(2010年度)

顕彰

富田 裕子 氏
(成城大学 兼任講師)

奨励

南 コニー 氏
(神戸大学大学院 文化学研究科 文化構造専攻 博士課程後期)

特別

東京国際女性映画祭
(代表:高野 悦子 氏)

顕彰

富田 裕子 氏
(成城大学 兼任講師)
研究テーマ 平塚らいてう研究に関する邦文・英文による学会発表 並び 論文出版
講評

平塚らいてう賞が創設されてから、本年は第6回目になるが、顕彰部門で初めて徹頭徹尾平塚らいてう研究に取り組んだ応募があり、たいへん喜ばしい。しかも受賞の主たる対象は、イギリスのシェフィールド大学歴史学部に提出された博士論文で、約470ページにわたる英文の力作である。題名はHiratuka Raicho and Early Japanese Feminism (『平塚らいてうと日本の初期フェミニズム』2001)、3年後Brill社から出版された。著者富田裕子氏のらいてう研究の動機は、海外特に英語圏におけるらいてう研究は1990年当時皆無に等しい状況だったことに「不満を覚えた」ため、と述べられているとおり、らいてうのフェミニズム思想とその実践を英米人に紹介したいと思ったからだという。
この目的を果たすために、富田氏はミクロとマクロの両面かららいてうの実像に迫り、時代に先んじてみずからの信念に忠実に生き、書いたらいてうの姿を最終的に浮き彫りにするべく情熱を傾けている。まず江戸期と明治期の日本の女性の地位から説き起こし、らいてうの急進的フェミニズムの形成、塩原事件、「青鞜」と新しい女、結婚と女性保護論争、新婦人協会など、らいてうの生涯にそって詳細に書く一方、らいてうとほぼ同時代を生きた日本あるいはヨーロッパの女性思想家や運動家たちと比較するとらいてうにはどんな特徴があるかなど、綿密に資料で裏付けながら説得力のある論を展開している。
その他、国内外での講演や学会発表も多く、日本のらいてう研究を海外に紹介したり、エジンバラでらいてうの映画会を主催するなど、世界にらいてうの名を広める上で大きく貢献している。まさにらいてう賞にふさわしい方といえよう。


奨励

南 コニー 氏
(神戸大学大学院 文化学研究科 文化構造専攻 博士課程後期)
研究テーマ 法と社会参加の間における女性の権利を見直す研究 及び エジプトにおけるFGM廃止運動
講評

本年度の奨励部門受賞者の南コニー氏は、女性の権利をめぐる法と社会参加の関連についての理論的研究を進める一方で、エジプトのアブガレブ村におけるFGM (Female Genital Mutilation, 女性性器切除)廃止会議に出席し、「女性の身体を意図的に傷つける伝統が生み出す暴力の連鎖」という題で発表するなど、国内外で活発に活動している。
その立ち位置は、グローカル(グローバル+ローカル)な視点でジェンダー・ギャップ(日本は134ヵ国101位)をとらえ、公と民の結びつきにより乗り越えていこうというものである。「法の制定」のみでは、女性の人権回復は難しいという現実を見据え、国内のみならず、国際的な意見交換が必要であるという若々しい意気込みに期待したい。


特別

東京国際女性映画祭
(代表:高野 悦子 氏)
研究テーマ

世界の女性監督作品を紹介し、日本に女性監督を輩出する

講評

東京国際女性映画祭は、「国連婦人の十年」の最終年にあたる1985年にスタートし、以後、25年を経過している。当初は女性の映画監督が世界的にも少なく、まして日本では殆どいなかった。
ジャンヌ・モローは「従来の男性文化に女性の視点を加えることで真の人間文化をつくることが出来る」といい、以後、女性監督の特色がにじみ出た、すぐれた映画の上映が重ねられた。
『東京国際女性映画祭20回の記録』によれば、それまで42カ国、225本の映画、180余名の女性監督が紹介されている。2010年11月の第23回の映画祭には、スペイン、アルゼンチン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、アメリカ、ポーランド、韓国、台湾、日本の8カ国、11本が上映され好評を博した。
東京国際映画祭は他国の国際女性映画祭との交流もあり、今後とも大きな国際的活動として女性の文化の輪を国内外に広げることが期待できる。 なお、「平塚らいてう賞」の原資となった羽田澄子監督の「元始女性は太陽であった 平塚らいてうの生涯」は最初に本映画祭で上映されている。


第6回 選考委員


  1. 蟻川 芳子 [日本女子大学学長]
  2. 中嶌 邦  [平塚らいてうの記録映画を上映する会会長]
  3. 出淵 敬子 [WILPF(婦人国際平和自由連盟)日本支部副会長]
  4. 羽田 澄子 [記録映画作家]
  5. 岩田 正美 [日本女子大学 現代女性キャリア研究所所長]

※所属、役職等は受賞当時のものです。

第5回(2009年度)

顕彰

松村 由利子 氏
(日本文藝家協会員、現代歌人協会員)

奨励

芝原 妙子 氏
(同志社大学大学院 アメリカ研究科 後期課程)

顕彰

松村 由利子 氏
(日本文藝家協会員、現代歌人協会員)
研究テーマ 母性保護論争についての新たな視点と究明
講評

本年度の「平塚らいてう賞」の顕彰部門は松村由利子氏の『与謝野晶子』(中公叢書 2009年2月刊)を主とする業績に対して贈呈することとなった。
近代日本の歴史研究のなかで、とかく軽んじられている女性史なのであるが、与謝野晶子は数少ない必ずとりあげられる人物の一人である。晶子の残した仕事は和歌・詩・小説・歌論・評論(社会批評を含む)・随筆・童話・童謡など多岐にわたる分野に膨大なものがあり、さらに与謝野源氏といわれる源氏物語の現代語訳など古典の紹介も有名である。したがって、与謝野晶子に関する研究も著作の基礎資料の再検討から夫鉄幹の関わりなどを含めて、様々な角度から進められてきているが、未だ課題は多いといえるであろう。
松村氏はこれまでの歌人そして平塚らいてうとの母性保護論争に注目があつまってきた晶子研究に対して、一分野にとらわれず晶子の全体をみようとした。科学への関心、十三人の子を産み育てたその思い、そしてその間にあふれ出た童話や童謡の創作、聖書への関心など、新しい晶子像をつけ加えた。男子優先の近代日本社会の中で、とらわれない女性自身の肯定や自立の活動を晶子の生き方によりそって明らかにしようとした。それは松村氏の記者生活や歌人としての活動を背景に、現代に訴えるものを、晶子に見出したからである。


奨励

芝原 妙子 氏
(同志社大学大学院 アメリカ研究科 後期課程)
研究テーマ トランスナショナル・フェミニズムの観点から考察する戦間期の日米女性の社会活動:平和運動と女性の権利獲得運動
講評

本研究は、二つの世界大戦に挟まれたいわゆる「戦間期」の権利獲得運動を「国境内(ナショナル)」のフェミニズムと「トランスナショナル・フェミニズム」に分けて考えれば、女性参政権獲得運動は前者、女性の平和運動は後者に属すという視点に立って考察を進めている。具体的には、婦人国際平和連盟の成り立ちの歴史を詳細に追求し、欧米人の日本人への働きかけによって、どのように日本の女性たちが触発され、「日本独自の平和運動」を創り出していったかを跡づけようとするものである。
この時代は日本における女性の高等教育が発達した明治―大正期にあたり、資料も多く、また欧米でも20世紀末から今世紀初めにかけ、再びこの時期の女性平和運動に対する関心の高まりを示す著作が増えている。それらは現代の世界情勢を反映していると思ってよかろう。そうだとすれば、本研究に期待されるものもいっそうふくらむと言える。


第5回 選考委員


  1. 蟻川 芳子 [日本女子大学学長]
  2. 中嶌 邦  [平塚らいてうの記録映画を上映する会会長]
  3. 出淵 敬子 [WILPF(婦人国際平和自由連盟)日本支部副会長]
  4. 羽田 澄子 [記録映画作家]

※所属、役職等は受賞当時のものです。

第4回(2008年度)

顕彰

山内 惠氏
(清泉女子大学、桜美林大学、東京女子大学等非常勤講師)

奨励

孔 令亜氏
(日本女子大学 家政学研究科 生活経済専攻修士課程)

特別

飯島 ユキ氏
(俳句 羅(ra)の会)

顕彰

山内 惠氏
(清泉女子大学、桜美林大学、東京女子大学等非常勤講師)
講評

本年度の「平塚らいてう賞」の顕彰部門は、山内氏の『不自然な母親と呼ばれたフェミニスト―シャ-ロット・パ-キンズ・ギルマンと新しい母性―』(東信堂、2008年5月)に授与されることになった。
本書は女性解放思想の歴史における「母性」をめぐる問題にメスを入れ、同時代の女性解放思想の文脈のなかで、ギルマンの「母性思想」がもつ新しさとその意味を探り、フェミニズムの流れのなかに位置づけ再評価しようとしたモノグラフである。
日本ではギルマンは小説『黄色い壁紙』の作者として一般に知られているアメリカ女性作家であるが、実践的な思想家としてのギルマンは当時のフェミニズムのいずれの陣営に対しても距離をおき、独自の先鋭な女性解放思想を創り上げて行った人である。その思想の軌跡は膨大な著作として残されているが、山内氏は内外の一次資料、二次資料ともよく読みこみ、19世紀から20世紀にかけての時代の転換期に生きたギルマンが、母性愛に乏しい「不自然な母親」という烙印を押され苦闘しながらも、「近代」という時代を超えた普遍性をもつ母性思想・女性解放思想を創り出そうと努力した経緯を解き明かしている。 「母性とフェミニズム」のせめぎあいのなかに、山内氏は「近代」フェミニズムそのものに内在する矛盾と葛藤を指摘し、ギルマンは「それらすべてを糧としてラディカルなフェミニズム思想を創り上げた」という結論にいたる。従来は私的領域に属するものと考えられていた母性を社会的領域へ解放しようとしたギルマンの主張は、現在でも全面的に認められているとはいえないはことを考えれば、ギルマンにおける「新しい母性」の問題は、21世紀のいまも仕事をもって働く母親の問題として継続している。そこに本書刊行のもうひとつの意味があろう。
最終章「ギルマンのフェミニズム思想と日本の受容」では、成瀬仁蔵、平塚らいてう、山川菊栄などそれぞれがギルマンの思想にどのように反応したかを論じていることも興味深い。 山内氏は、1970年愛知県立大学外国学部卒業後、企業に就職し働いたが、長男の出産を機に退職、20余年間3人の子育てと主婦業に専念した。42歳のとき埼玉大学教養学部に学士入学、続いて同大学大学院文化科学研究科に進学した後、東京外国語大学大学院地域文化研究科博士課程後期に入学、コーネル大学大学院への1年間の留学を経て、2001年同大学同研究科を満期退学し、2002年東京外国語大学より学術博士号を授与された。
山内氏のこのような経験は、氏のシャーロット・パーキンズ・ギルマン研究が単に机上の空論でなく、実際の体験に裏打ちされた問題意識の存在の結果であると推察される。その意味で本研究には著者の追求の切実さが感じられ、女性解放はどのようなものであるべきかについてギルマンと共に思索している著者の真摯な姿勢が反映している。
以上に述べたことから、山内氏の研究はらいてう賞に誠にふさわしいものと考える次第である。

著書 著書 不自然な母親と呼ばれたフェミニスト

奨励

孔 令亜氏
(日本女子大学 家政学研究科 生活経済専攻修士課程)
講評

経済のグローバル化が進むなかで、中国社会の変容にひとびとの関心が向かっている。ダイナミックに社会が変化していくなかにあって、中国の女性たちはどのように働き、生活しているのか。中国社会が大きく変容しているなかで、女性労働者の現状と課題はどこにあるのか。本論文はそれを日本との比較であきらかにしようとするものである。
社会制度の違いは女性労働者の実態にどのように異なった影響をもたらすのか。男女の平等が原則の社会主義の国で男女間の収入格差が生じるのはなぜなのか。本研究は女性労働の分析において十分に解明されていなかった分野に新たな光を当てる研究であるとおもわれる。


特別

飯島 ユキ氏
(俳句 羅(ra)の会)
講評

著書『今朝の丘 平塚らいてうと俳句』を2007年11月に出版した。
女性解放と平和運動に力を入れた平塚らいてうは、若いときから俳句愛好家であった。一部には知られていたが、飯島氏によって収集され、はじめてこの句集となった。飯島氏自身、句集を出版し俳誌「羅」の代表者であり、若いときに平塚家の近隣に住み、夫婦にかわいがられ、亡くなるまで交流があったのも縁となっている。
表題は『どことなく春の日ざしや今朝の丘』からとられている。
本書出版後、反響を呼び、新聞その他で紹介され、らいてうの一面を知らせる書として注目されたが、それを契機に歳時記の季語として「らいてう忌」の復活を願って、「らいてう忌」の俳句募集に踏み切った。第一回は2053句、第二回は1801句が、男女を問わず、国内外からも投句され、入選句が公表されている。今後も、活動を継続する由である。
日本発祥の文学俳句をたしなむ人々は多く、「らいてう忌」への反響は広範に広がった。あらためてらいてう先駆者としての願いをこの活動が推進する役割を果たすと期待している。

飯島ユキ氏著書 今朝の丘 飯島ユキ氏 資料

第4回 選考委員


  1. 後藤 祥子 [日本女子大学学長]
  2. 中嶌 邦  [平塚らいてうの記録映画を上映する会会長]
  3. 出淵 敬子 [WILPF(婦人国際平和自由連盟)日本支部副会長]
  4. 羽田 澄子 [記録映画作家]
  5. 大沢 真知子 [日本女子大学人間社会学部現代社会学科教授]

※所属、役職等は受賞当時のものです。

第3回(2007年度)

顕彰

上村 千賀子氏
(独立行政法人 国立女性教育会館客員研究員)

奨励

齋藤 慶子氏
(お茶の水女子大学大学院 人間文化研究科 博士後期課程 人間発達科学専攻)

顕彰

上村 千賀子氏
(独立行政法人 国立女性教育会館客員研究員)
講評

本年度の「平塚らいてう賞」顕彰部門は、上村氏の『女性解放をめぐる占領政策』に授与されることとなった。本書は、平塚らいてうがめざした「女性解放」という歴史課題に真正面から取り組んだ研究の成果である。
上村氏は、日本女子大学卒業後、東京大学大学院に進み、1978年、国立婦人教育会館に勤務され、女子教育研究に携わる他、幅広く社会教育活動をされ、1997年から群馬大学で、ジェンダーと生涯学習に関する授業を担当される傍ら、ジェンダーおよび戦後の女性政策の研究を進め、『アジア・太平洋地域の女性政策と女性学』、『女性学教育/学習ハンドブック』、『ジェンダーと社会教育』、『現代的人権と社会教育』、『女性解放をめぐる占領政策』など研究成果を次々発表されて来た。本書は、氏の研究を集大成したものと言えよう。
本書の優れて評価されるべき点は、視点の斬新性と論点の実証性である。戦後60年余を経た今日、占領政策や終戦時の事象に関する様々な論調が表れ、その都度、「真実は何か」が多くの人々の関心事となった。戦後日本の社会変容における最重要事の一つは、男女平等を謳った日本国憲法の制定であり、それにより、「女性解放」は市民運動というよりも、政治や社会の常識として日本人の目の前で実現したという事実である。本研究は、この点を注目しつつ、その実現過程をアメリカの占領政策に焦点を絞り、占領期の政策決定過程を最新資料を駆使し精査している。鋭い探求心をもって、氏は散逸している資料の収集および新たな資料発掘の成果により、課題の新局面を実証している。日本の男女共学実現や労働省婦人少年局成立過程とも照合し、日米双方の視点を重視し、交差する諸問題を解明し、戦後日本の女性の地位向上に不可欠な課題、労働や教育における男女平等の実現を実証する上で際立った成果をもたらした。国境を越えてなされた氏の研究成果こそ、そのパイオニア性ゆえに「らいてう賞」の顕彰部門の授与に余りある研究であり、著書であろう。

女性解放をめぐる占領政策

奨励

齋藤 慶子氏
(お茶の水女子大学大学院 人間文化研究科 博士後期課程 人間発達科学専攻)
講評

本研究は研究テーマに関連する行先研究が主として小学校女性教員大会の議論の理念的研究に留まることを踏まえ、より各地域の女教員の実態にせまり、本課題を究明することを意図している。対象時期も従来あまり触れられていない、総力戦期から、戦後の1947年に至るまでを目標とし、研究への意欲が見られる。
さらに、近代日本の後半により強調されてくる「母性」イデオロギーが、女性教員の職業と家庭の両立問題にどのように反映するかを追究し、地域によって重点の置き方が違っていることを実証しつつあり、注目される。
今後の研究も女教員大会の検討などとあいまって、全国的な地域の事例研究をさらに進め整理しながら、同時に本課題の分析方法の構築をはかり、現代の女性教員の支援につなげたいとしている。
平塚らいてうには「母性」への重視があり、本研究は奨励賞にふさわしい成果があることが期待できる。


第3回 選考委員


  1. 後藤 祥子 [日本女子大学学長]
  2. 中嶌 邦  [平塚らいてうの記録映画を上映する会会長]
  3. 杉森 長子 [WILPF(婦人国際平和自由連盟)日本支部会長]
  4. 羽田 澄子 [記録映画作家]
  5. 出淵 敬子 [WILPF(婦人国際平和自由連盟)日本支部会長]

※所属、役職等は受賞当時のものです。

第2回(2006年度)

顕彰

海南 友子氏
(ドキュメンタリー映画監督)

奨励

近藤 未佳子氏
(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻)

奨励

菊地 栄氏
(立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科)

顕彰

海南 友子氏
(ドキュメンタリー映画監督)
講評

海南氏は、大学で歴史学を専攻し、社会では7年間、報道デイレクターの仕事をして独立し、ドキュメンタリー映画製作を開始した。2001年、『マルデイエム 彼女の人生に起きたこと』、2004年、『にがい涙の大地から』を次々製作し、世界各地のドキュメンタリー映画祭に出品して評価され、平和・協同ジャーナリスト基金奨励(2004年)、黒田清日本ジャーナリスト会議新人賞(2005年)を授与された。
氏の作品はいずれも、未だに解決できない戦争と平和の避け難い諸問題を取り上げ、その実情を検証し、問題の重要性を世に訴えている。若い世代に属する氏の発言が映像化され、世に出ることの意義は大きい。さらに氏は、製作映画の基盤となる資料を著作、『地球が危ない』(幻冬社)、『未来創造としての戦後(補償)』(現代人文社)、『ドキュメンタリーの力』(子どもの未来社)にまとめ、映像の背景には真摯な資料研究の存在が不可欠であることを示している。総じて、日本はもとより国際社会で高く評価されるには、氏の持つドキュメンタリー映画製作者としての情熱と技量、優れた歴史感覚、さらに、日本人として女性として、今、考えるべき問題を直視し、「映画」という方法で世に訴える勇気が評価されたのであろう。
平塚らいてうが生涯持ち続けた美点と一致するものが、海南氏のドキュメンタリー製作と作品に限りなく見出せる。
<URL:http://kanatomoko.jp/

Mardiyem-マルディエム-彼女の人生に起きたこと にがい涙の大地から

奨励

近藤 未佳子氏
(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻)
講評

本研究の優れた特徴は、都市計画と女性の関わりを歴史的社会学的工学的視点から探求し、ジェンダーの問題を工学分野において追求するところである。工学分野でのジェンダー研究ともいえ、その斬新性は抜群である。
さらに研究の段取りも精密である。たとえば、修士論文で戦前期の東京を取り上げ、ジェンダーと都市政策の研究に取り組んだ後、東京大学21世紀COEプログラムに参加し、戦前期の大阪に焦点を移し、都市環境改善活動と女性の関わりを研究し、今後は研究範囲を戦後期に拡大し、アメリカなど外国との比較研究を構想し、博士論文へと発展させる壮大な研究計画にも期待される。
また行政資料、地域・地方資料、女性団体資料、女子大学関係資料など様々な領域の多様な原資料の収集と分析を綿密に行っている点が研究の信憑性を高めている。このことは視点の斬新さとともに評価に値する。


奨励

菊地 栄氏
(立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科)
講評

現代における出産はあまりにも病院での医療的側面に中心が置かれ、子を産む女性の自然なありようが無視されていることに着眼した点が新鮮である。
著書『イブの出産、アダムの誕生』のなかでは、出産の歴史や各国の現代出産事情をふまえ、どういう出産のありかたが望ましいかを具体的事例をあげながら論じ、出産が人間の自然な営為であることを忘れがちな現代に警鐘を鳴らしている。
また菊地氏は出産準備クラスや出産体験の意識調査、生まれたての赤ちゃんの写真展など、多岐にわたる活動を通して女性たちが産むことに関し抱えている問題を捉え、解決しようと努力している。
活動と研究の今後の成果が期待される。

著書 「イブの出産、アダムの誕生」

第2回 選考委員


  1. 後藤 祥子 [日本女子大学学長]
  2. 中嶌 邦  [平塚らいてうの記録映画を上映する会会長]
  3. 杉森 長子 [WILPF(婦人国際平和自由連盟)日本支部会長]
  4. 羽田 澄子 [記録映画作家]
  5. 出淵 敬子 [WILPF(婦人国際平和自由連盟)日本支部会長]

※所属、役職等は受賞当時のものです。

第一回(2005年度)

顕彰

人身売買禁止ネットワーク
代表者:戒能民江氏、大津恵子氏、吉田容子氏

奨励

丸浜 江里子氏
(明治大学大学院)

奨励

大島 香織氏
(日本女子大学大学院)

特別

らいてう研究会
代表者:折井美耶子氏

顕彰

人身売買禁止ネットワーク
代表者:戒能民江氏、大津恵子氏、吉田容子氏
講評

現在、国連が優先的課題として求められているテーマのひとつが "人身売買禁止の活動"である。しかし日本ではまだ政府の動きも見られず、アジアをはじめとする国際社会から指摘されているのが実情である。
このような状況下で本団体は、しっかりとした基本的な考えを持ち、多方面の専門家と市民の連携によって研究・活動を進めてこられていることに敬服する。
このような NGO の発言力は今も将来も、日本社会にとって重要な役割を担うものと思う。常に深刻な問題に先駆的に取り組んできた「平塚らいてう」が今この世に存在しているならば、この課題に関わったのではないかという思いを込めて「らいてう賞(顕彰)」を贈るものとする。
<URL:JNATIP 人身売買禁止ネットワーク

人身売買禁止ネットワーク資料

奨励

丸浜 江里子氏
(明治大学大学院)
講評

半世紀前に、杉並の公民館に集う主婦たちが始めた水爆禁止署名運動の足跡をたどり掘りおこす研究は、膨大な資料の整理・記録・聞き取りという地道な努力と熱意を要する貴重な活動になる。
当時と現代の人間の関係など、生の人間に目線がいけばおもしろい論文にまとまるし、評価の異なる市民活動を分析することによって、より客観的な成果も期待できる。
今回は修士論文であり1年後の研究発表とともに、この研究をさらに継続・発展させ、その成果を社会に還元していかれるよう望む。

丸浜江里子氏・新聞記事

奨励

大島 香織氏
(日本女子大学大学院)
講評

反核運動の象徴であるヒロシマの平和運動の原点を研究対象とすることは、現在の時点でも重要な課題である。
また学術分野での発表も着実に丹念に行っており、研究の優れた計画性が窺われる。
今後、ヒロシマの戦後状況の中での女性の存在や活動に焦点を絞った研究も加えてほしい。

大島香織氏・資料

特別

らいてう研究会
代表者:折井美耶子氏
講評

本研究会は「平塚らいてう」について最も正統な活動をしてこられた会であると敬服する。
特に、在野に根ざした女性研究に携わった人々の集大成である『青鞜人物辞典』は、市井の方々の集いの中から生まれ、女性研究に大きな役割を果たすものとして社会的評価を得ている。その意味で、「平塚らいてう賞(顕彰)」に値する。
しかしながら一方で本研究会は、この「らいてう賞」創設のきっかけとなった「平塚らいてうの記録映画」の作成に絶大なる貢献をされており、顕彰というよりはむしろ第一回の賞を記念し、感謝の気持ちを伝えるべく「特別賞」をさしあげることとした。
今後も、特に学会や学術雑誌など研究の場を通じ、「平塚らいてう」の名を後世に繋げられることを大いに期待する。

らいてう研究会資料 らいてう研究会活動写真

第1回 選考委員


  1. 後藤 祥子 [日本女子大学学長]
  2. 中嶌 邦  [平塚らいてうの記録映画を上映する会会長]
  3. 杉森 長子 [WILPF(婦人国際平和自由連盟)日本支部会長]
  4. 羽田 澄子 [記録映画作家]

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