顕彰 |
三浦 まり 氏 (上智大学法学部教授) |
---|---|
奨励 |
山中 仁吉 氏 (北海道大学大学院法学研究科法学政治学専攻博士課程) |
特別 |
海老原 志穂 氏 (東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所フェロー) |
顕彰 |
三浦 まり 氏 (上智大学法学部教授) |
---|---|
研究テーマ | 「女性の政治参画に関する包括的研究:『男性政治』を打ち破る」 |
受賞理由 | 三浦まり氏は、ジェンダーと政治をテーマに女性の政治参画の遅滞、日本の民主主義が劣化していく様を分析し数々の研究成果を発表してきた。『さらば、男性政治』 (岩波新書 2023/1/20)における堅実な研究に基づき説得力のある研究内容は、顕彰にふさわしいと判断した。 |
奨励 |
山中 仁吉 氏 (北海道大学大学院法学研究科法学政治学専攻博士課程) |
---|---|
研究テーマ | 「平塚らいてうの秩序構想―大正・昭和期を中心に―」 |
受賞理由 | 山中仁吉氏の研究は、日本政治におけるジェンダー格差の歴史的淵源を探るという問題意識のもと、戦前の女性参政権要求を含む多様な女性運動を検討し、最終的には男性を中心に記述されてきた日本政治史の書き換えをも目指すものである。既発表論文では、戦前日本の女性参政権運動の最大の成果である治安警察法改正に成功した新婦人協会について、らいてうや市川房枝ら協会関係者の間で、女性の政治的権利を何のためどれほど要求すべきか、協会は何をすべきか等において認識のずれがあったこと、そこから生じた困難等を、種々の文献から明らかにした。 |
特別 |
海老原 志穂 氏 (東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所フェロー) |
---|---|
研究テーマ | 「チベット女性詩の翻訳・紹介とその発展に関する文学史的研究」 |
受賞理由 | 海老原志穂氏の「チベット女性詩の翻訳・紹介とその発展に関する文学史的研究」は、長くチベットで抑圧状態にあった女性の文学への参画に着目したことが新しく、それは、チベットの女性詩人の力強い作品を紹介することやご自身が翻訳された「チベット女性詩集」などで具現化しており、これは大きな業績と言える。 |
顕彰 |
婦人国際平和自由連盟(WILPF)日本支部 |
---|---|
顕彰 |
池上 清子 氏 (長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科 客員教授) |
奨励 |
元橋 利恵 氏 (大阪大学人間科学研究科 招へい研究員) |
顕彰 |
婦人国際平和自由連盟(WILPF)日本支部 |
---|---|
研究テーマ | 婦人国際平和自由連盟(WILPF)日本支部の100年の歩み-ジェンダー平等と平和の構築- |
受賞理由 | 当該応募団体は、世界で最も早く、戦争によることのない、人類の世界平和を望む女性によって結成された、世界婦人平和自由連盟の日本支部として、1921年に、婦人平和協会の名称で設立されて以来、101年の星霜を重ねてきた。政治・思想・宗教的立場の相違を超え、長きにわたり世界平和、男女共同参画、ジェンダー平等の実現をスローガンとした活動を続け、その時その時に応じたテーマに取り組む研究活動を行いながら、社会の持続性を探求し続けてきた。 |
顕彰 |
池上 清子 氏 (長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科 客員教授) |
---|---|
研究テーマ | 開発途上国での母子健康手帳を使った母子保健の推進とその評価 |
受賞理由 | 池上氏は、長期にわたり国連の国際公務員として国内外で活動を続け、リプロダクティブ・ヘルスに取り組み、近年は、世界平和と男女共同参画社会の実現を担う次世代の研究者、実務家を育てる努力を重ねてきた。国際NGO、プラン・インターナショナル・ジャパンの理事長として、子どもの権利を尊重し、途上国の女の子たちを支援するBecause I am a Girlキャンペーンを推進、SDGsの掲げる「誰一人取り残されない社会」を作りあげるために、その裏付けとなる科学的なデータの収集を行う活動を実践している。 |
奨励 |
元橋 利恵 氏 (大阪大学人間科学研究科 招へい研究員) |
---|---|
研究テーマ | 日本におけるマザリングの包括的研究 |
受賞理由 | 今回提出された主要な研究成果は、『母性の抑圧と抵抗-ケアの倫理を通して考える戦略的母性主義-』(晃洋書房、2021年2月)である。本書は、担い手の多くが女性であるがゆえに非政治的なものとみなされ、公的社会において重要な価値を持たないとされてきたケアの営みが、じつは社会の基盤を作る重要なものであると高く評価するケア・フェミニズムの考え方を整理し、対象者との間に深刻な葛藤を抱えながらケアの遂行に努力するケアの担い手の経験や思考の中にこそ、普遍的価値があり既存社会を変革していく潜在力があると示した。ケアの担い手をエンパワメントし男女共同参画社会の実現に資すると期待されることから、受賞に値すると判断した。 |
特別 |
差波 亜紀子 氏 (法政大学 文学部 兼任講師) |
---|---|
奨励 |
安野 直 氏 (早稲田大学 文学研究科 博士後期課程) |
奨励 |
五十嵐 舞 氏 (一橋大学大学院 社会学研究科 博士後期課程) |
特別 |
差波 亜紀子 氏 (法政大学文学部 兼任講師) |
---|---|
研究テーマ | 近代日本の女性知識層の広がりと社会的役割を明らかにすること |
受賞理由 | 今回提出された具体的な研究成果は、平塚らいてうの評伝『日本史リブレット人093 平塚らいてう-信じる道を歩み続けた婦人運動家』(山川出版社、2019年2月)である。 既存研究を踏まえつつ、一般読者向けに、らいてうの全生涯を簡明に紹介することを企図した良書である。本文の各所に、適切な頭注が付され、疑問を残さず読み進められるように配慮されている。新出資料の発掘や新視点から論ずることをめざした書ではない点がやや物足りないが、逆に、らいてうの思想や活動の分析を専らにした研究では言及されてこなかった興味深い記述も多々みられる。例えば、らいてうの父が編み物上手で、幼い頃、手袋を編んでくれたエピソードなど、進歩的で恵まれた生育環境を髣髴とさせる。 ジェンダーギャップが153ヵ国中121位という現代日本において、女性解放に力を尽くしたらいてうの軌跡を知らしめる本書が遍く読まれ、現状打破に繋がることを期待したい。 |
奨励 |
安野 直 氏 (早稲田大学 文学研究科 博士後期課程) |
---|---|
研究テーマ | ロシアにおける性的少数者のナラティブの構築 -レズビアンとトランスジェンダーを中心に |
受賞理由 | 先進国を中心にLGBTQの権利を認める動きが急速に起きている。男性と女性という二元論的な区別を超えて、女性あるいは男性の中の多様性を認め、それを理解することは、ジェンダーをより深く理解し、そこから解放されるために欠かせない作業である。しかし、性的少数者に関する実態はそれほど明らかにされているわけではない。また、社会主義の国では性の多様性がどのように受け入れられ、語られてきたのか。それが経済の発展とともに、どのように変遷してきたのかについての研究も少ない。本研究はロシア文学の作品を通して性的マイノリティーがどのように語られ、またそのナラティブがどのように変遷していたのかを分析している。テーマの先進性と今後の発展性を評価し、受賞に値するとの判断に至った。 |
奨励 |
五十嵐 舞 氏 (一橋大学大学院 社会学研究科 博士後期課程) |
---|---|
研究テーマ | 9/11以降の性暴力をめぐる言説とトニ・モリスンのフェミニズム |
受賞理由 | 本研究は、近年のマイノリティについてのさまざまな議論や権利の主張のなかで、原点ともいえる黒人女性作家のトニ・モリスンの作品を中心として論じたものである。五十嵐氏は9/11の惨事においても白人中心の情報が正当化されている現実を踏まえてアメリカの黒人に対する意識や差別を浮き彫りにし、マイノリティに対する蔑視や性暴力といった現代社会にもなお存在する問題を明らかにすることを目的としている。 今後の研究においては、五十嵐氏はトニ・モリスンの9/11以降の作品をとおして、彼女の収集した史資料の調査から性暴力やそれに対する過去の議論や社会運動等を明らかにし、現代社会における女性に関する問題をさまざまな角度から検討してモリスン作品の意義と彼女のフェミニズムを明らかにしていくことを目指している。 以上の五十嵐氏の研究は、これまでの発表や論文をさらに進展させる可能性を示唆しており、らいてうの目指した女性解放に関する研究に該当するものである。 |
顕彰 |
青木 千賀子 氏 (日本大学 国際関係学部 特任教授) |
---|---|
顕彰 |
三具 淳子 氏 (日本女子大学現代女性キャリア研究所 客員研究員) |
顕彰 |
青木 千賀子 氏 (日本大学 国際関係学部 特任教授) |
---|---|
研究テーマ | ネパールのダリット女性の地位向上とマイクロファイナンスの活動 |
講評 | 青木氏は、ネパールの「ダリット」と呼ばれるカースト制度の最下層に置かれた被差別集団の女性たちの地位向上を目的として、2007年から現地調査をおこなってきた。彼女たちの社会的な差別構造を解消するためには、女性グループへのマイクロファイナンス(小口金融)活動を実践することであるとし、女性グループへの聞き取り調査を経て養鶏、養豚、店の開設等の所得創出のための活動を開始して、差別解消、社会規範の見直しのために貢献した。 青木氏の多数の論文や著書『ネパールの女性グループによるマイクロファイナンスの活動実態―ソーシャルキャピタルと社会開発』(日本評論社、2013年8月)には、ネパールでなされた活動が詳細に報告されている。これらの著作から、単に発展途上国の実情の調査や文献資料調査にとどまっているのではなく、青木氏が女性の自立に向けて手を差し伸べ、ともに社会的な差別を解消すべく努力したことが読み取れる。このような青木氏の活動は、らいてうの目指した女性解放や世界平和を現代に実践しているといえ、らいてう賞に最もふさわしいものである。 |
顕彰 |
三具 淳子 氏 (日本女子大学現代女性キャリア研究所 客員研究員) |
---|---|
研究テーマ | 夫婦の平等な関係構築と妻の就業変容との関係を動態的に探究すること。 |
講評 | 女性の活躍が求められているとはいうものの、女性が結婚や出産後も働き続けることは容易ではない。三具氏の著書『妻の就労で夫婦関係はいかに変化するのか』(ミネルヴァ書房、2018年5月)は、なぜ多くの女性は結婚や出産で職場を去らなければならなかったのか、そのことによって夫婦関係にどのような変化がもたらされるのか、さらには、女性の再就職は夫婦関係をどのように変質させるのかということを、社会学の理論を使って分析したものである。 三具氏は「性役割を受け入れることと夫婦の対等な関係は同時に成り立たない」という近代家族が内包する矛盾に対して、女性の再就職は矛盾に満ちた夫婦関係に対する女性の異議申し立てであり、稼得力をつけることで対等な関係を模索する女性たちの挑戦であると捉える。そして、量と質の両方の分析方法を用いて、その仮説を検証している。 本研究は、今注目されている女性の学び直しと再就職に、新しい意味と解釈を加えたという点で高く評価されるべき研究書で、男女共同参画の視点から顕彰にふさわしいと判断した。 |
顕彰 |
中村 久司 氏 |
---|---|
顕彰 |
佐久間 亜紀 氏 (慶應義塾大学 教職課程センター) |
奨励 |
川口 かしみ 氏 (早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程) |
顕彰 |
中村 久司 氏 |
---|---|
研究テーマ | シルビア・パンクハーストの女性解放と国際平和活動の研究 |
講評 | 今回の応募作品の中で、ひときわ光っていたものは中村久司氏の著書であった。内容は男女平等の思想に目覚め、女性参政権の獲得に献身的な努力をし、ついにそれを実現させたパンクハースト母娘(エメリン、クリスタベル、シルビア)の思想と行動を具体的に描き、英国の女性たちの理想実現の激しい闘いを伝えている。 中村氏の方法はサフラジェットたちの努力と苦闘の跡をしっかりと把握するために、ロンドンを始め英国各地の歴史を実際に訪れて調査・記録し、史実を尊重し説得力を生み出したものである。読者は自らもその場に居合わせたかのように、女性参政権運動が社会を揺るがせた大波小波を見る思いがする。著者の見方は巨視的であると同時に微視的で、さすがに歴史家の優れた洞察眼が発揮されている。 中村氏は勤務していた税関を退職後、英国の大学院で調査研究、博士号を得た。英国に永住し、歴史的・社会的・地理的な視野から同国の民主主義を研究し続けており、再び新著が書かれる日を待ちたいものである。 |
顕彰 |
佐久間 亜紀 氏 (慶應義塾大学 教職課程センター) |
---|---|
研究テーマ | 男女共同参画社会を実現するための教師をどう育てるか、その研究と実践 |
講評 | 男女共同参画社会の実現には、教育が重要であり、教員の果たす役割が大きいことは言うまでもない。しかし、日本では教員教育を改革改善するための学術研究の歴史は浅く、ジェンダーの視点からの研究蓄積はさらに乏しい。 こうした状況下で、応募者が刊行された『アメリカ教師教育史研究―教職の女性化と専門職化の相克』(東京大学出版会、2017年)は、米国で何故教職が女性職となり、何故未だに教師の社会的地位が低く低賃金が続いているのかを、新資料による裏付けとジェンダーの観点から明らかにした画期的な研究成果である。米国では公的な教師養成機関は19世紀初頭に女子校として設立され、そこで教鞭を取ったのは女性であった。この女子校が日本の女子師範学校設立に大きな影響を与えたという基礎的史実も明らかにされた。 本書の研究は、このように女性史・教育史・教師教育史を架橋する重要な意義を持つ。また、教師の社会的待遇を改善せず、カリキュラム改革を迫るだけの政策を約百年続けてきた米国教育史の検証は、日本の教師教育にも警鐘を鳴らし、その改革に大きな示唆を与えるだけでなく、男女共同参画や女性解放にも資すること大であろうと期待される。 |
奨励 |
川口 かしみ 氏 (早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程) |
---|---|
研究テーマ | 憲法上のジェンダー平等規定とその解釈 -憲法24条の再定位 |
講評 |
日本は今大きな時代の転換点を迎えている。これからの社会では、より多くの女性が妻や母としてだけではなく、個人として自己実現し、自己のアイデンティティを確立する時代になる。他方、現実には憲法24条改正草案が提出され、女性の権利を制約し、家族のあり方や性別役割を固定化するような法律案が議論されている。 そのような時代背景の中で、個人としての女性を尊重しつつ、憲法24条を再解釈することで、私的領域における国家の不介入を基礎とする従来の憲法の枠組みを維持しながら夫婦間の平等保障を可能とし、社会のジェンダー平等実現を実現し、家庭内でのジェンダー平等を実現するための制度構築について考察することを目的とする本研究は、時宜にかなったものであると同時に、賞の趣旨に合致したものであり、奨励賞に値するものと判断した。 |
顕彰 |
日本女性外科医会 |
---|---|
特別 |
NPO法人 平塚らいてうの会 |
顕彰 |
日本女性外科医会 |
---|---|
研究テーマ | 日本医学会分科会における男女共同参画を目指したJAWSの活動 |
講評 | 最近の日本では医師国家試験の合格者の約3割が女性であり、外科医志望の女性も増えつつある。しかしその前途は厳しく、医師であり続けようとすれば、環境改善、育児支援、勤務形態の柔軟化、産後の復職支援などが必要になる。そのような立場にある女性外科医のワーク・ライフ・バランスをサポートし、継続就労を推進するために、2009(平成21)年「日本女性外科医会」(略称JAWS)を立ち上げた。 以上は代表世話人冨澤康子氏が書いたものの要約であるが、このような信念ともいえる考え方が核心にあるからこそ、日本女性外科医会が困難を乗り越えて改革を進めた実績があると思われる。その着眼と工夫とは新鮮で人間社会の現実に根差しているものであると同時に、非常な活力と説得力を持つ。平塚らいてうが希求した男女共同参画を目指す活動は、顕彰にふさわしい。 |
特別 |
NPO法人 平塚らいてうの会 |
---|---|
研究テーマ | 『平塚らいてうの会紀要』(2008~)によるらいてう研究成果の発表 |
講評 |
2001(平成13)年に発足した「NPO法人平塚らいてうの会」は、『ニュース』の発行や「らいてう講座」の実施、『青鞜』原本の蒐集、『平塚らいてうの会紀要』の刊行などを通して、らいてう研究の促進及びらいてうの思想の普及に多大な尽力をされた。『紀要』に掲載された未発表資料は貴重であり、とりわけ従来不分明であった戦時中の思想的模索及び戦後の平和思想の解明は、研究を大きく進展させた。 また、2006(平成18)年には信州の上田に「らいてうの家」を開設し、本年で10周年を迎える。この記念施設の運営を通して、らいてうの存在を改めて世に知らしめ、らいてうのめざした平和社会を現代に実現させるべく活動してきた功績はきわめて大きい。 このような際立った功業に対し、「特別」を贈呈することとした。 |
顕彰 |
日本女子大学 平塚らいてう研究会 |
---|---|
奨励 |
小川 真理子 氏 (お茶の水女子大学 基幹研究院) |
顕彰 |
日本女子大学 平塚らいてう研究会 |
---|---|
研究テーマ | 平塚らいてうの著作や行動を研究し、今後の女性のあり方を考える |
講評 |
日本女子大学平塚らいてう研究会は、結成以来24年の長きにわたり、掲げた研究テーマを弛まず真摯に追求し、らいてう研究を着実に進展させた。 |
奨励 |
小川 真理子 氏 (お茶の水女子大学 基幹研究院) |
---|---|
研究テーマ | DV被害者支援と民間シェルターに関する国際比較研究 |
講評 |
小川氏はすでに2007年提出の修士論文で「日本におけるドメステイック・バイオレンス被害者支援を行う民間シェルターの考察-女性たちの市民活動としての民間シェルター活動の可能性」について書いているように、以後一貫してフェミニズムの視点から、DVと草の根運動などによる被害者支援の問題を研究している。最初の民間シェルターができてから20年余、DV防止法や自治体等の関与も徐々に実現してきたが、シェルターの必要性は現在も続いている。それどころか、DVの被害者は増える傾向さえみられる。 |
奨励 |
岩田 三枝子 氏 (東京基督教大学 大学院 神学研究科 神学専攻=博士後期課程=) |
---|
奨励 |
岩田 三枝子 氏 (東京基督教大学 大学院 神学研究科 神学専攻=博士後期課程=) |
---|---|
研究テーマ | 大正期における婦人運動-覚醒婦人協会と賀川ハルを中心に |
講評 | 明治・大正・昭和期を通じて、社会事業家・思想家として著名な賀川豊彦の妻、賀川ハルに焦点をおいた研究である。女性の解放や女性労働の改善・協同組合の必要性を主張した雑誌『覚醒婦人』の発行や講演会などを通じて、覚醒婦人協会の活動を明らかにしている。 従来、注目されていなかった協会への着眼、その中心となったハルの信仰や思想を対象とすることで、大正期の女性運動に新しい展望を与えた。同時期の欧米の女性解放の動向や日本の女性活動家、市川房枝、平塚らいてうらとの関係などの解明も期待できる。 |
顕彰 |
肖 霞 氏 (中華人民共和国 山東大学 外国語学院 日本語科 教授) |
---|---|
奨励 |
高橋 順子 氏 (日本女子大学 人間社会学部現代社会学科 助教) |
特別 |
東日本大震災女性支援ネットワーク (共同代表:竹信 三恵子 氏・中島 明子 氏) |
顕彰 |
肖 霞 氏 中華人民共和国 山東大学 外国語学院 日本語科 教授) |
---|---|
研究テーマ | 元始 女性は太陽であった『青鞜』及びその女性研究 |
講評 |
平塚らいてう賞に初めて、中国(山東大学)の方が応募された。雑誌『青鞜』を手がかりに近代日本の女性を対象とする研究で、中国語版『元始女性是太陽 (*1) -“青鞜"及其女性研究』が山東人民出版社より2013年6月刊行された。全9章428ぺージに及ぶ大冊である。 |
奨励 |
高橋 順子 氏 (日本女子大学 人間社会学部現代社会学科 助教) |
---|---|
研究テーマ | 近現代沖縄社会における「新しい女たち」 一沖縄初の女性校長砂川フユを中心に |
講評 | 沖縄県初の女性校長砂川フユを中心に、近現代沖縄社会の「新しい女たち」の登場と活動を明らかにしようとしている。フユの学んだ沖縄県女子師範学校は、県内一の女子教育のエリート校であり、『青鞜』が読まれたり、沖縄研究に大きな足跡を残した著名な伊波普猷が招かれたりしている。 |
特別 |
東日本大震災女性支援ネットワーク (共同代表:竹信 三恵子 氏・中島 明子 氏) |
---|---|
研究テーマ | 東日本大震災で被災した女性たちのニーズが支援活動や復興過程に反映させられると共に、復興支援の諸政策にジェンダー・多様性への視点が組み込まれること |
講評 | 東日本大震災で被災した女性たちのニーズが支援活動や復興過程に反映させられると共に、復興支援の諸政策にジェンダー・多様性への視点が組み込まれること
東日本大震災女性支援ネットワークのメンバーの方々は、3年間にわたり共同代表の竹信三恵子、中島明子両氏を中心として東日本大震災の被災者―特に女性に焦点を当て、復興支援活動を続けてきた。 その活動の特色は次のようなものである。
総じて言えば、このネットワークの方々は、災害支援をきっかけに多くのことを実践しながら学び、これまでにない新しい支援のありかたを経験を通して示唆している。平塚らいてうとは直接の関係はないが、以上の理由から「特別賞」に十分値すると選考委員全員が賛同した。 |
顕彰 |
秋山 佐和子 氏 歌誌 「玉ゆら」主宰、日本歌人クラブ中央幹事、現代歌人協会会員、日本文藝家協会会員 |
---|
顕彰 |
秋山 佐和子 氏 歌誌 「玉ゆら」主宰、日本歌人クラブ中央幹事、現代歌人協会会員、日本文藝家協会会員 |
---|---|
研究テーマ | 「青鞜」と関わった歌人 原阿佐緒と三ヶ島葭子の歌と生の再検討 |
講評 |
平塚らいてう賞の第八回の顕彰は、秋山佐和子氏の「『青鞜』と関わった歌人原阿佐緒と三ヶ島葭子の歌と生の再検証」に差し上げることが決まった。選考委員会で一同賛同の即時一致をみた。 |
顕彰 |
ジャン・バーズリー (Jan Bardsley) 氏 (ノースカロライナ大学 チャペルヒル校 アジア研究学部 准教授) |
---|
顕彰 |
ジャン・バーズリー (Jan Bardsley) 氏 (ノースカロライナ大学 チャペルヒル校 アジア研究学部 准教授) |
---|---|
研究テーマ | 平塚らいてう、青鞜、フェミニズム、現代文化、日米女性の交流 |
講評 | 平塚らいてう賞の創設以来、本年は第7回目になるが、第6回に続き英語で書かれた研究、平塚らいてうと「青鞜」についてのジャン・バーズリ-氏の研究に「らいてう賞」を差し上げることに選考委員会で衆議一決した。
平塚らいてうの作品が日本のみならず広く海外でも読まれ、研究されていることを証明するものであり、よろこばしいことである。 |
顕彰 |
富田 裕子 氏 (成城大学 兼任講師) |
---|---|
奨励 |
南 コニー 氏 (神戸大学大学院 文化学研究科 文化構造専攻 博士課程後期) |
特別 |
東京国際女性映画祭 (代表:高野 悦子 氏) |
顕彰 |
富田 裕子 氏 (成城大学 兼任講師) |
---|---|
研究テーマ | 平塚らいてう研究に関する邦文・英文による学会発表 並び 論文出版 |
講評 |
平塚らいてう賞が創設されてから、本年は第6回目になるが、顕彰部門で初めて徹頭徹尾平塚らいてう研究に取り組んだ応募があり、たいへん喜ばしい。しかも受賞の主たる対象は、イギリスのシェフィールド大学歴史学部に提出された博士論文で、約470ページにわたる英文の力作である。題名はHiratuka Raicho and Early Japanese Feminism (『平塚らいてうと日本の初期フェミニズム』2001)、3年後Brill社から出版された。著者富田裕子氏のらいてう研究の動機は、海外特に英語圏におけるらいてう研究は1990年当時皆無に等しい状況だったことに「不満を覚えた」ため、と述べられているとおり、らいてうのフェミニズム思想とその実践を英米人に紹介したいと思ったからだという。 |
奨励 |
南 コニー 氏 (神戸大学大学院 文化学研究科 文化構造専攻 博士課程後期) |
---|---|
研究テーマ | 法と社会参加の間における女性の権利を見直す研究 及び エジプトにおけるFGM廃止運動 |
講評 | 本年度の奨励部門受賞者の南コニー氏は、女性の権利をめぐる法と社会参加の関連についての理論的研究を進める一方で、エジプトのアブガレブ村におけるFGM (Female Genital Mutilation, 女性性器切除)廃止会議に出席し、「女性の身体を意図的に傷つける伝統が生み出す暴力の連鎖」という題で発表するなど、国内外で活発に活動している。 |
特別 |
東京国際女性映画祭 (代表:高野 悦子 氏) |
---|---|
研究テーマ | 世界の女性監督作品を紹介し、日本に女性監督を輩出する |
講評 | 東京国際女性映画祭は、「国連婦人の十年」の最終年にあたる1985年にスタートし、以後、25年を経過している。当初は女性の映画監督が世界的にも少なく、まして日本では殆どいなかった。 |
顕彰 |
松村 由利子 氏 (日本文藝家協会員、現代歌人協会員) |
---|---|
奨励 |
芝原 妙子 氏 (同志社大学大学院 アメリカ研究科 後期課程) |
顕彰 |
松村 由利子 氏 (日本文藝家協会員、現代歌人協会員) |
---|---|
研究テーマ | 母性保護論争についての新たな視点と究明 |
講評 |
本年度の「平塚らいてう賞」の顕彰部門は松村由利子氏の『与謝野晶子』(中公叢書 2009年2月刊)を主とする業績に対して贈呈することとなった。 |
奨励 |
芝原 妙子 氏 (同志社大学大学院 アメリカ研究科 後期課程) |
---|---|
研究テーマ | トランスナショナル・フェミニズムの観点から考察する戦間期の日米女性の社会活動:平和運動と女性の権利獲得運動 |
講評 | 本研究は、二つの世界大戦に挟まれたいわゆる「戦間期」の権利獲得運動を「国境内(ナショナル)」のフェミニズムと「トランスナショナル・フェミニズム」に分けて考えれば、女性参政権獲得運動は前者、女性の平和運動は後者に属すという視点に立って考察を進めている。具体的には、婦人国際平和連盟の成り立ちの歴史を詳細に追求し、欧米人の日本人への働きかけによって、どのように日本の女性たちが触発され、「日本独自の平和運動」を創り出していったかを跡づけようとするものである。 |
顕彰 |
山内 惠氏 (清泉女子大学、桜美林大学、東京女子大学等非常勤講師) |
---|---|
奨励 |
孔 令亜氏 (日本女子大学 家政学研究科 生活経済専攻修士課程) |
特別 |
飯島 ユキ氏 (俳句 羅(ra)の会) |
顕彰 |
山内 惠氏 (清泉女子大学、桜美林大学、東京女子大学等非常勤講師) |
---|---|
講評 |
本年度の「平塚らいてう賞」の顕彰部門は、山内氏の『不自然な母親と呼ばれたフェミニスト―シャ-ロット・パ-キンズ・ギルマンと新しい母性―』(東信堂、2008年5月)に授与されることになった。 ![]() |
奨励 |
孔 令亜氏 (日本女子大学 家政学研究科 生活経済専攻修士課程) |
---|---|
講評 | 経済のグローバル化が進むなかで、中国社会の変容にひとびとの関心が向かっている。ダイナミックに社会が変化していくなかにあって、中国の女性たちはどのように働き、生活しているのか。中国社会が大きく変容しているなかで、女性労働者の現状と課題はどこにあるのか。本論文はそれを日本との比較であきらかにしようとするものである。 |
特別 |
飯島 ユキ氏 (俳句 羅(ra)の会) |
---|---|
講評 | 著書『今朝の丘 平塚らいてうと俳句』を2007年11月に出版した。 ![]() ![]() |
顕彰 |
上村 千賀子氏 (独立行政法人 国立女性教育会館客員研究員) |
---|---|
奨励 |
齋藤 慶子氏 (お茶の水女子大学大学院 人間文化研究科 博士後期課程 人間発達科学専攻) |
顕彰 |
上村 千賀子氏 (独立行政法人 国立女性教育会館客員研究員) |
---|---|
講評 |
本年度の「平塚らいてう賞」顕彰部門は、上村氏の『女性解放をめぐる占領政策』に授与されることとなった。本書は、平塚らいてうがめざした「女性解放」という歴史課題に真正面から取り組んだ研究の成果である。
![]() |
奨励 |
齋藤 慶子氏 (お茶の水女子大学大学院 人間文化研究科 博士後期課程 人間発達科学専攻) |
---|---|
講評 | 本研究は研究テーマに関連する行先研究が主として小学校女性教員大会の議論の理念的研究に留まることを踏まえ、より各地域の女教員の実態にせまり、本課題を究明することを意図している。対象時期も従来あまり触れられていない、総力戦期から、戦後の1947年に至るまでを目標とし、研究への意欲が見られる。 |
顕彰 |
海南 友子氏 (ドキュメンタリー映画監督) |
---|---|
奨励 |
近藤 未佳子氏 (東京大学大学院工学系研究科建築学専攻) |
奨励 |
菊地 栄氏 (立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科) |
顕彰 |
海南 友子氏 (ドキュメンタリー映画監督) |
---|---|
講評 |
海南氏は、大学で歴史学を専攻し、社会では7年間、報道デイレクターの仕事をして独立し、ドキュメンタリー映画製作を開始した。2001年、『マルデイエム 彼女の人生に起きたこと』、2004年、『にがい涙の大地から』を次々製作し、世界各地のドキュメンタリー映画祭に出品して評価され、平和・協同ジャーナリスト基金奨励(2004年)、黒田清日本ジャーナリスト会議新人賞(2005年)を授与された。 ![]() ![]() |
奨励 |
近藤 未佳子氏 (東京大学大学院工学系研究科建築学専攻) |
---|---|
講評 | 本研究の優れた特徴は、都市計画と女性の関わりを歴史的社会学的工学的視点から探求し、ジェンダーの問題を工学分野において追求するところである。工学分野でのジェンダー研究ともいえ、その斬新性は抜群である。 |
奨励 |
菊地 栄氏 (立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科) |
---|---|
講評 | 現代における出産はあまりにも病院での医療的側面に中心が置かれ、子を産む女性の自然なありようが無視されていることに着眼した点が新鮮である。 ![]() |
顕彰 |
人身売買禁止ネットワーク 代表者:戒能民江氏、大津恵子氏、吉田容子氏 |
---|---|
奨励 |
丸浜 江里子氏 (明治大学大学院) |
奨励 |
大島 香織氏 (日本女子大学大学院) |
特別 |
らいてう研究会 代表者:折井美耶子氏 |
顕彰 |
人身売買禁止ネットワーク 代表者:戒能民江氏、大津恵子氏、吉田容子氏 |
---|---|
講評 |
現在、国連が優先的課題として求められているテーマのひとつが "人身売買禁止の活動"である。しかし日本ではまだ政府の動きも見られず、アジアをはじめとする国際社会から指摘されているのが実情である。
![]() |
奨励 |
丸浜 江里子氏 (明治大学大学院) |
---|---|
講評 | 半世紀前に、杉並の公民館に集う主婦たちが始めた水爆禁止署名運動の足跡をたどり掘りおこす研究は、膨大な資料の整理・記録・聞き取りという地道な努力と熱意を要する貴重な活動になる。
![]() |
奨励 |
大島 香織氏 (日本女子大学大学院) |
---|---|
講評 | 反核運動の象徴であるヒロシマの平和運動の原点を研究対象とすることは、現在の時点でも重要な課題である。 ![]() |
特別 |
らいてう研究会 代表者:折井美耶子氏 |
---|---|
講評 | 本研究会は「平塚らいてう」について最も正統な活動をしてこられた会であると敬服する。 ![]() ![]() |