受賞者・受賞団体紹介

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過去の受賞者・受賞団体

※所属、役職等は受賞当時のものです。

第17回(2023年度)受賞者・受賞団体

顕彰

三浦 まり 氏
(上智大学法学部教授)

奨励

山中 仁吉 氏
(北海道大学大学院法学研究科法学政治学専攻博士課程)

特別

海老原 志穂 氏
(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所フェロー)

顕彰

三浦 まり 氏
(上智大学法学部教授)
研究テーマ 「女性の政治参画に関する包括的研究:『男性政治』を打ち破る」
受賞理由

 三浦まり氏は、ジェンダーと政治をテーマに女性の政治参画の遅滞、日本の民主主義が劣化していく様を分析し数々の研究成果を発表してきた。『さらば、男性政治』 (岩波新書 2023/1/20)における堅実な研究に基づき説得力のある研究内容は、顕彰にふさわしいと判断した。
 日本において、ジェンダー平等、多様性を重視した社会政策についての提言は、これまで選挙という「民主的な」装置により却下され続けてきた。三浦氏は、日本において女性の政治参画のスピードがいかに遅いか、女性の地位のどの部分が低く、それが社会全体にどういう影響をもたらしてきたのかを示している。これが男性による政治の帰結であるということを、女性を排除する政治風土や政治文化、女性が抱えるケア役割の偏りやセクシャルハラスメントなど女性が政治家を目指すにはあまりに大きな障壁、ミソジニーが生じる過程に着目することから説得力を持って説明している。
 政治過程に関する分析は、日本はなぜ変わらないのかと疑問を持つ人々への回答となると同時に、今後の日本の変化を促す力をもつものと期待される。


奨励

山中 仁吉 氏
(北海道大学大学院法学研究科法学政治学専攻博士課程)
研究テーマ 「平塚らいてうの秩序構想―大正・昭和期を中心に―」
受賞理由

 山中仁吉氏の研究は、日本政治におけるジェンダー格差の歴史的淵源を探るという問題意識のもと、戦前の女性参政権要求を含む多様な女性運動を検討し、最終的には男性を中心に記述されてきた日本政治史の書き換えをも目指すものである。既発表論文では、戦前日本の女性参政権運動の最大の成果である治安警察法改正に成功した新婦人協会について、らいてうや市川房枝ら協会関係者の間で、女性の政治的権利を何のためどれほど要求すべきか、協会は何をすべきか等において認識のずれがあったこと、そこから生じた困難等を、種々の文献から明らかにした。
 今後は、協会を離れ女性参政権獲得運動とは距離を置いたらいてうのジェンダー秩序変革構想を、近年、法政大学大原社会問題研究所に寄贈された平塚らいてう関係資料等も利用して検討する計画であるという。世界経済フォーラムが発表するジェンダー・ギャップ指数においてとりわけ政治参画の分野での立ち後れが目立つ日本の現状に照らして意義あるとともに、らいてうの名を冠する本賞にふさわしい研究内容であり、受賞に値する。


特別

海老原 志穂 氏
(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所フェロー)
研究テーマ 「チベット女性詩の翻訳・紹介とその発展に関する文学史的研究」
受賞理由

 海老原志穂氏の「チベット女性詩の翻訳・紹介とその発展に関する文学史的研究」は、長くチベットで抑圧状態にあった女性の文学への参画に着目したことが新しく、それは、チベットの女性詩人の力強い作品を紹介することやご自身が翻訳された「チベット女性詩集」などで具現化しており、これは大きな業績と言える。
 また、書評等に引用されているが、「私に近寄るな」は、「甘露」や「真珠」が女性の比喩であるならば、それを否定する作者の強い声が聞こえ、チベットでの女性のあり方を明確に理解できる詩である。さらに、この詩集は、チベット女性詩の翻訳・紹介において、初めての日本語書籍でもあり、アシアの女性が生きてきた道を考えることができるすぐれた書籍となっている。
 日本や韓国との比較研究なども今後予定されており、研究の展開も期待したい。


第17回 選考委員(五十音順)


  1. 池上 清子  〔公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン理事長〕
  2. 差波 亜紀子 〔日本女子大学文学部史学科教授〕
  3. 篠原 聡子  〔日本女子大学学長〕
  4. 高野 晴代  〔一般社団法人日本女子大学教育文化振興桜楓会理事長、日本女子大学名誉教授〕
  5. 永井 暁子  〔日本女子大学現代女性キャリア研究所所長〕

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