カモミールnetマガジン バックナンバー(ダイジェスト版)

 2024年1月号 

+‥【目次】‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
(1)目白が丘だより
(2)「卒業生ネットワーク」拡充に向けて
(3)卒業生発 リレーエッセイ
(4)研究・教育の現場から
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□■-- 目白が丘だより ------------■□

<<教師の「不安」と子どもの未来 >>
          教職教育開発センター所長 清水睦美

   教職教育開発センターでは、2024年度の教員採用試験の対策講座が2月より始まります。

 採用試験の早期化を受けて、基礎基本講座を2月中5回、実践講座を2月から始めてゴールデンウィーク前に終わるという例年より早いスケジュールを組みました。

特に、実践講座は面接や模擬授業に焦点をあてるので、少人数のクラス編成としていますが、今年度は早期化を受けて3・4年生混合によるクラス編成になっています。講師は、例年どおり、各自治体で、何らかの形で教員採用試験に関わったことのある先生方にお願いしており、できるだけ受験自治体と重なるように工夫しています。

 教員採用試験対策講座での学生さんたちの学びは、例年、想像をはるかに超えてきます。最初は不安そうにしているのですが、講師の先生の指導や、少人数クラスでのお互いの学びを確認するなかで、教師の仕事への理解をより深めていくようです。きっと彼女たちのまなざしの先には、いつか出会うであろう子どもたちの姿が見えるようになるのでしょう。

とはいえ、まだ教壇に立ったことのない彼女たちの想像は、過去の自分がおかれた環境に基づくものだったりするでしょうから、そうした振り返りは、一つの事柄を複眼的にみる力へと変換されていきます。気がつけば、採用試験に受かるか受からないかという表面的な「不安」は通り過ぎ、あるとすれば、複眼的にみえた状況の中で何を選択するかの「不安」へと変わっているように見えます。

 2024年の年明け、能登地方は大地震に見舞われました。それから一ヵ月、ようやく学校再開となったという地域もあると聞きます。ようやく、先生と子どもたちが、学校という場で再会できたということになります。きっと、子どもたちは、この間に起きたことを、先生に、友達に、たくさん話しているのだろうと思います。そんな場面で、先生は、子どもたちの声に耳を傾け、かれらの経験をいろいろ想像しながら聞くことになるのでしょう。

そこで、どんな相槌を打つのか。その相槌が、子どもたちにどう受け取られるのか。複眼的にみえた子どもたちの状況に対して、どんな相槌を打つことが、かれらの未来にどのような影響を及ぼすのか。そこには、きっと大きな「不安」があるのだろうと思います。でも、そんな深い「不安」を伴う相槌は、子どもたちが抱えさせられている困難な状況に寄り添う姿として映るのではないかと思うのです。


□■-- 「卒業生ネットワーク」拡充に向けて ------------■□

<< 「公開講座」(3月)で「学生と卒業生との懇談会」を開催 >>
                   教職教育開発センター 

 センターは3月16日(土)、公開講座「教員採用試験入門−教職を志す皆さんへ−」を開催します。

昨年度に引き続き、講座後半は「学生と卒業生との懇談会」を行います。今夏に教員採用試験を受験する3年生が主な参加者で、卒業生の皆さんと質疑応答ができる形態をとる予定です。試験準備や受験自治体の学校の様子等、学生の質問にお答えいただければ幸いです。

また、「公開講座」終了後、卒業生とセンター教職員との「卒業生懇談会」も予定しております。皆さんのネットワークを拡大する機会として是非ご活用ください。詳細は別途、臨時号でお知らせいたします。


  □■-- 研究・教育の現場から ------------■□

<< 子どもの『すごい!』を引き出す理科授業の工夫 >>
             教育学科特任教授 宮下 治

1 教員が「楽しい」「ウキウキする」と感じる理科授業の工夫
 いわゆる「理科嫌い・理科離れ」が小学校5年生にはじまり、中学生、高校生の段階で急増するという我が国の大きな教育課題があります。そのためにも、身近な自然事象についての観察、実験を通して、発見を楽しんだり、考えたりし、それを生活に取り入れようとするなどの自然科学の楽しさを小学校段階から計画的に育んでいくことが必要です。

  ところで、小学校の先生方は理科の授業が得意なのでしょうか。独立行政法人科学技術振興機構(JST)理科教育支援センターと国立教育政策研究所が共同で、2008年度に公立小学校の教職5年未満の小学校学級担任500人を対象に調査を実施しています。

その結果によると、理科が「好き」と回答した教員は91%、一方、理科の指導を「得意」と回答した教員は0%、「やや得意」と回答した教員は36%であったことが報告されています。
つまり、小学校教員は理科は嫌いではないが、児童への指導は得意ではないという実態が明らかになったのです。

   元々、理科があまり得意ではなかった先生方も小学校には多くおいでのことと思います。そうした先生方が教科書に掲載されている観察や実験をそのまま指導しなければいけないと思えば、やはり理科指導もあまり得意ではないとなってしまうのかもしれません。

 教える教員自身が「楽しい」「ウキウキする」と感じる理科授業でなかったら、子どもたちに自然事象の楽しさや不思議さを伝えていくことはできないのではないでしょうか。そのため、私は、小学校教員や中学校・高校理科教員を目指す学生に対して、学生自身に身近な自然事象から「楽しい」「ウキウキする」と思える新たな発見をさせています。

その上で、発見した自然事象の内容を、手作りの観察や実験器具等を工夫させ、思考力や表現力を伸ばし、自然大好きな子どもを育むための理科授業の計画をさせ、模擬授業を通して、実践的に理科指導力を培っています。

2 子どもの「すごい!」を引き出す理科授業
 私自身多くの理科授業を行い、多くの先生方の理科授業を参観させてもらってきました。その中で、子どもたちにとってすばらしいと思える理科授業に遭遇することがあります。

そうした授業に共通したことは、子どもたちから「すごい、すごい!」というつぶやきの声がたくさん聞こえてくることです。子どもたちは自然事象に感動をし、その不思議さが何故起こったのかなど、真剣に考えていきます。

 この「すごい!」という声は、何も小学生だけに限ったことではありません。中学生・高校生も同じです。そして、大学生の模擬授業の中でも、児童・生徒役として出すのではなく、本来の大学生としても「すごい!」という声を出すのです。

多くの子どもたちから、この「すごい!」の声を引き出すためにも、先ずは、教員自身が自然事象の中から新たな発見をし、自分自身が「楽しい」「ウキウキする」理科授業の教材を準備していくことこそ、自然大好きな子どもを育てる理科授業を構築していくことができるものと考えています。

【参考図書】:宮下 治著;『実践 理科授業論−手作り授業の魅力とカリキュラム・マネジメント−』,デザインエッグ株式会社,2020年.

 

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