カモミールnetマガジン バックナンバー(ダイジェスト版)

 2023年5月号 

+‥【目次】‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
(1)目白が丘だより
(2)「卒業生ネットワーク」拡充に向けて
(3)卒業生発 リレーエッセイ
(4)研究・教育の現場から
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□■-- 目白が丘だより ------------■□
<<個人と集団のつながりを意識した学びを >>
          教職教育開発センター所長 清水睦美

 2023年度がスタートして早くも2ヶ月が過ぎました。当センターで2月から始まった2024年度教員採用試験に向けた一次対策も終了し、学生たちは教育実習に向けて取り組んでいるところです。
    教育実習が終わると、間もなく教員採用試験に臨むことになります。今年度は幼小中高あわせて70名の学生が教員採用試験対策講座に取り組みましたので、センターでも多くの学生さんとかかわる機会をもちました。
 興味深いのは、講座が進むにつれて、お互いに率直に意見を言い合い、それによってお互いが高め合うような関係へと変化するような様子が見られることです。
こうした仲間ができてくると、皆でいる時はとても楽しそうで安心してキャピキャピした感じもあるのですが、キャンパス内で偶然に個別に出会ったりすると、背筋をピンとはって堂々とした感じが漂い、たくましささえ感じたりします。
   そのような様子を見るにつけ、仲間というのは、それぞれの日常を支えているのだと思い至ります。

  「個別最適化」という言葉がICT活用の促進とともよく取り上げられるようになりましたが、先の学生さんたちの様子を見るにつけ、個々人が単独で何かを学ぶといったことは幻想であると感じます。
   私たちの社会は、個々人と集団とが何らかの関係でつながっているのであり、学習はそうした関係を意識しつつ組み立てられる必要があると思います。
    個々人をバラバラにしたところの単なる「個別」の最適な学びなどありえないのです。

 このように学生さんたちを教職へと送り出す側としていろいろ考えることはありますが、他方で、彼女たちの就職先である学校の教員の待遇改善にも必須要件であると考えてはいます。
   5月30日より仲間の研究者と一緒に「教員の長時間勤務に歯止めをかけ、豊かな学校教育を実現するための全国署名」を、Change.org署名および紙署名で始めました。 ご関心のある方は是非アクセスいただき、署名をご検討いただけたらありがたいです。


□■-- 「卒業生ネットワーク」拡充に向けて ------------■□
<< 今年度も学生と卒業生との交流を継続 >>
                  教職教育開発センター 

 センターは昨年度、「教員を目指す学生と学校現場で活躍する卒業生の交流会」(10月、目白祭同日開催)と「学生と卒業生の懇談会」(2023年2月、「公開講座」)を開催し、卒業生と教職を目指す学生が交流する場を設けました。
   忙しい時間を縫って参加してくださった卒業生の皆様からは、「学生と楽しく交流できて良かった」等前向きなコメントもいただき、センター一同、ほっとしております。

 今年度も同様の機会を設ける予定です。是非、学生たち向け、皆様から直接、学校現場のリアルと教職の楽しさ・喜びを語っていただきたいと考えます。


□■-- 卒業生発リレーエッセイ ------------■□
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        佐藤 真理子(前横浜市立吉原小学校長 家政学部食物学科1996年卒業)

 Touch the future through education.私が20代の終わりに横浜市の姉妹都市交流で米国サンディエゴ市を訪れた時に、市教委のモットーとして掲げられていた言葉です。

 サンディエゴ市はメキシコと国境を接し、大きな国際港もある国際都市のため、様々な国、地域の子どもがともに学んでいます。このモットーは、子ども達へ「学ぶことで(あなたの)未来は拓かれる。」というメッセージが込められています。と同時に私は現地の公立の小学校、芸術専門高等学校の授業見学、教員とのディスカッション、教職員大学院での研修をとおして、もう一つの意味に気づきました。それは、教師が教えることは、子どもの未来は、もちろん、社会全体の未来に関わる大切なことだということです。

  当時の私は中学校教員として、目の前の生徒達を教え、対応することに無我夢中でした。しかし、サンディエゴ研修での学び、とりわけこのモットーを知ることで、一気に視野が広がり、改めて「教師」という仕事の醍醐味、責任を考える機会になったのです。

  私は、短期大学卒業後、すぐに中学校の家庭科教員になったものの、数年して教えるための知識、技術の不足を痛感し、日本女子大学通信課程に編入学しました。荒れる学校現場、部活動指導を続けながらの大学の勉強は、本当に大変でしたけれども、一つひとつが私の中に染み入る深い学びとなりました。足掛け8年、卒業した時の達成感は何にも代えられない喜びです。その後、私は在ドイツの日本人学校に3年間勤務。市教委指導主事、小中学校副校長、そして小中高等学校の校長を経験してきました。校種、立場はかわっても、いつも私の心の中にはTouch the future through education.があります。

 私は教師という仕事が大好きです。これから先の時代子どもも教師も未来に夢をもって、教育活動が進んでいくことを願っています。


□■-- 研究・教育の現場から ------------■□
<< 教職大学院で学んでみませんか >>
          教育学科特任教授 宮下 治

   私は、かつて、東京都立高校の教員、東京都教育委員会の指導主事や課長職を務めた後、愛知教育大学の教職大学院で教授職を務めていました。
 教職大学院には、大学卒業後すぐに進学してくる院生や、学校現場で教員をしていながら大学院で学ぶ院生が在籍しており、大学院の授業はとても活気に溢れたものでした。
   そうした私の経験から、日本女子大学在学中の皆様や卒業された皆様にも「教職大学院」を知っていただき、興味を持っていただければと願い、この原稿を記します。

 ところで、教職大学院は2008年4月に発足し、2023年度で16年目を迎えています。2022年度現在、全国には54の教職大学院(国立47、私立7)があり、各都道府県に1つはある形になっています。

   教職大学院は、(1).学校現場における職務についての広い理解をもって自ら諸課題に積極的に取り組む資質能力を有し、新しい学校づくりの有力な一員となり得る新人教員の養成、(2).学校現場が直面する諸課題の構造的・総合的な理解に立って、教科・学年・学校種の枠を超えた幅広い指導性を発揮できるスクールリーダーの養成を目的として創設されています。
   教職大学院の標準修了年限は2年とされていますが、各大学院の判断・工夫により、現職教員の履修の便宜等に配慮して、短期履修コース(例えば1年)や長期在学コース(例えば3年)の開設も可能となっています。
   2年以上在学し、45単位以上修得することが修了要件とされており、10単位以上は学校における実習が義務化されています。
 なお、実習は一定の教職経験を有することにより10単位の範囲内で免除可能となっています。修了すると「教職修士(専門職)」の学位が授与されます。

 日本女子大学在学中で教職課程を履修されている皆様、そして教員免許状を取得された卒業生の皆様、将来の日本の学校教育をリードしていく力を身に着けていくことのできる「教職大学院」での学びも検討されてはいかがでしょうか。

 

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