カモミールnetマガジン バックナンバー(ダイジェスト版)

 2020年8月号 

◆ 目次 ◆ ----------------------------------------------------------------------

(1) 所長だより
(2) 教育時事アラカルト

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◇ 所長だより ◇

高校教育改革と地理総合A 地図と地理情報システム(GIS)の活用(1)
           教職教育開発センター所長  田部 俊充

 2022年4月から高校必履修科目として「地理総合」が新設されました。
 今回は3つの柱の1つ目、(1)「地図と地理情報システム(GIS)の活用」の話です。

 GISとはGeographic Information Systemの略称で、地理情報システムと訳されています。  地球上に存在する地物や事象をコンピュータの地図上に可視化して、情報の関係性、パターン、傾向を導き出すのが大きな役割です。

 今年度の前期の本学の授業はすべてオンラインとなりました。
 PowerPointによって作成した動画をアップロードするオンデマンド型遠隔授業のための動画を作成するなかで,電子国土Webという国土地理院の地図サイトを使って簡単なGISに取り組んでもらおうと思いました。
 小中学校の社会科でも高校の地理歴史科でも「身近な地域の調査」の学習を行いますが、自分の地域についてGISの学習を通じてもっと知ってもらおうと思ったのです。
 みなさんにも少し体験して頂きましょうね。

 まず、「地理院地図」(URL:https://maps.gsi.go.jp/)を開きます。
 「日本女子大学」を検索すると、地図の中心(中心十字線の交点)の標高が表示されます。
 地形図では標高30mになっていますが、地図の中心を移動させると標高が変化するのがわかると思います。ちなみに早稲田大学の標高は、地形図では9mになっていますが、このような標高の違いを知ることは防災学習を進める上でも基本です。来月号でもこの続きをお楽しみに。(続く)

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◇ 教育時事アラカルト 第82回 ◇

「新しい生活様式」とどう向き合うか
−バランス感覚を養う−
           教職教育開発センター教授  坂田 仰

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の日本社会を席巻している。学校生活もまた例外ではない。臨時休業下の卒業式や入学式の中止、自宅学習は何とかかクリアできたものの、学校が再開された現在、「新しい生活様式」との調整という大きな課題が立ち塞がっている。

 密閉、密集、密接のいわゆる「三密」を回避し、ソーシャルディスタンスを保つ。
 マスクの着用。新型コロナウイルス感染症対策としては不可欠な視点である。
 だが、対話を重視する近年の教育スタイル、身体的接触が避けられない体育の授業等、教育実践の場において、「新しい生活様式」は、時に学びに対する障害となる。

 この時期、特に問題となるのが「熱中症」対策である。熱がこもるマスクの着用はその危険性を加速する。
 文部科学省の調査によれば、2019(令和元)年9月1日現在、公立学校の普通教室における空調(冷房)設備の設置率は78.4%、特別教室等は50.5%、体育館等のそれは3.2%となっている。この状況を前に、感染症への対応と熱中症対策のどちらを優先させるべきか、逡巡する教員は少なくない。

 残念ながら、全国共通の正解は存在しない。空調(冷房)設備の設置当、学校の実情に応じた判断が求められる。
 その際、文部科学省が、状況を見極めつつ臨機応変の対応をとることを求めている点に留意する必要があろう。
「新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、学校教育活動においては、近距離での会話や発声等が必要な場面も生じうることから、飛沫を飛ばさないよう、児童生徒等及び教職員は、基本的には常時マスクを着用することが望ましいと考えられます。ただし、気候の状況等により、熱中症などの健康被害が発生する可能性が高いと判断した場合は、マスクを外すよう御対応ください。」等とする記述である(「熱中症事故の防止について(依頼)」令和2年5月27日付け2教参学第1号)。

 また、環境省と厚生労働省が作成したリーフレット、「令和2年度の熱中症予防行動」は、「気温・湿度の高い中でのマスク着用は要注意」、「屋外で人と十分な距離(2メートル以上)を確保できる場合には、マスクをはずす」、「マスクを着用している時は、負荷のかかる作業や運動を避け、周囲の人との距離を十分にとった上で、適宜マスクをはずして休憩を」と呼びかけている。
 マスクの着用は必須ではない。状況によって熱中症対策を優先させてよい場合が存在することを前提に「新しい生活様式」との調整を心がけていく必要がある。

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