目白会では、毎年十一月の立冬の頃、日本女子大学に学ぶ留学生に対して援助金を贈っている。今年もその行事である留学生懇談会が百年館五階の会議室で行われ、出席した四十九名の留学生の方たちに援助金をお贈りした。
この行事は昭和六十三(一九八八)年に始められたもので、すでに二十年以上続けられている。目白会の諸行事の中でも、大きな柱の一つとなっているが、何故、在校生ではなくて留学生なのかと疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれない。
それは、この当時、日本人の在校生に対しては、従来からさまざまな形での奨学金や援助の制度はあったが、外国からの留学生には、皆無ではないものの、まだ極めて貧弱なものだった。しかも実生活においては、当然のことながら慣れない異国での暮らしで、大変苦労されていた。折角、日本女子大学の校風を慕って外国から勉学に来てくれているのだし、年齢も自分たちの娘や孫と変わらない。何か少しでも援助をしてあげられたらという気持ちが出発点だったと思う。
目白会は、女子大の卒業生の父母の中でも、さらに日本女子大学を何らかの形でサポートしたいという方々の集まりなのだが、残念ながら会員の数も予算もごく限られたものだ。その中から、毎年卒業生には全員、卒業式の晴れ着の胸につけるコサージュに加えて、留学生への援助ということなので、最初は確か一人三万円、三十名の方にお渡しした。その後、留学生の数も次第に増加してきて、目白会だけでは対応しきれなくなったため、泉会にお願いして、共同でこの事業を進めることにした。現在では助っ人にお願いした泉会の方が割合がずっと多くなったが、とにかく年間一人当たり八万円の学業援助金を差し上げている。
現在、東京で暮らす大学生一人当たりの生活費が幾らくらいになるか詳しくは知らないが、おそらく最低でも年間数百万円は下るまい。それから見れば、われわれの援助金などはほんの雀の涙といったところだ。
私は、ほとんど毎回この留学生との懇談会に出席させていただいているが、初めの頃、留学生たちにとって支援金は、せいぜい昼の食事代かおやつ代に消えてしまうのだろうと思っていた。それでもよい、母国を離れ、言葉も不自由な中で一生懸命勉強している彼女たちに、少しでも憩いのひとときが与えてあげられるのなら‥‥と。
しかし、何度か懇談会に出て、彼女たちとの交流が深まるにつれ、それは間違いだということが分かった。彼女たちは、この援助金の意味をしっかりと理解してくれていて、私が考えていた以上に大切に、有効に使ってくれていたのだ。多くの留学生の方たちが、援助金への感謝の言葉とともに、このお金が本当に温かく心の支えになると語ってくれた。このことは是非会員の皆さん方にお伝えしなければならないと思う。
それともう一つ感心するのは、彼女たちはそれぞれ韓国、中国、ベトナム、インド、ミャンマーなどとお国は違っているが、みんな大きな夢を持って勉学に励んでいることだ。日本女子大学で学んだことを祖国で生かし、多くの人々の幸福のために寄与したいと考え、努力している。こうした真摯な前向きな姿勢には、私たちも学ぶ点は多いし、また、将来必ず日本との力強い架け橋になってくれることだろう。目白会会員の国境を越えた善意の種は、今にきっと外国で素晴らしい花を咲かせてくれることだろうと思う。
善意の花と言えば、目白会では、日本女子大学の目白と西生田の学園敷地内に、美しい花の苗木を植樹する活動を行っている。二年程前から始められた新しい事業で、しかも比較的地味な活動だが、これも十年、二十年と継続されるならば、やがては学園全体が花で埋めつくされる日が来るに違いない。とそんなことを夢見ながら、また学園の発展を願いながら、毎年、学長さんや会員の方々と共に若い苗木の植え付けをしている。できればもっとたくさんの方々に目白会に入っていただき、こうした卒業生の善意の花を更に大きく美しく咲かせていただきたいと思う。
「目白会だより第53号」より
|