来春教員になる方へ − 卒業生からの応援メッセージ −(2011年度)

卒業生から

『ともに磨き合いましょう』 
        品川区立小山台小学校 校長  齋藤 早苗 (1980年度 文学部教育学科卒業)


 先日、「教えるということ」(大村はま著・共文社)をテキストに使って、教員3年目までの若手教員研修会を行いました。本を読んで、今自分が悩んでいること、課題だと思っていることを話し合いましたが、どの先生も様々な壁にぶつかって、しっかり自分と向き合っているなぁと実感しました。  ある先生が、「『子どもが好き。子どもが可愛い。』と思って教師になったつもりでしたが、それは『私は愛情に溢れた、いい人間なんだ』と何か自分に酔ったような思いであったことに気づきました。」と正直に話していたのが印象的でした。  『人を育てる』とは、とても厳しいものです。責任を伴います。ですから、子どもが可愛いから教師になったという言い訳だけでは立ちゆかないのです。教師が「いい人」なのは当たり前のことだからです。真剣に人を思うとは、本当の愛情とはどういうことなのか。 それに気づいた若い先生は素晴らしいなと思います。  子どもたちとともに自分自身も成長しよう、子どもたちとともに学び続けようとする教師は、魅力的です。困難な壁にぶつかりながら、自分自身と向き合い、自問自答しながら歩む教師には力がついていきます。教師である前に人として、謙虚に自分自身を見つめ磨いていく。この姿勢はずっと求められ、忘れてはならないことだと思います。  四月からぜひ学校現場で、一緒に悩み、学び、そして磨きあいましょう。

『自分以外の誰かの幸せのために』
      品川区立旗台小学校 主幹教諭 木村 已典 (1980年度 家政学部児童学科卒業)

                           
 「先生と一緒に算数の勉強をしたら、算数が大好きになったよ。」
小学校の教員になって30年になりますが、子ども達からこんな声を聞くと本当に嬉しくなります。子どもに向き合う毎日に悩みは付いて回ります。ですから、友達との関係がうまく結べず、毎日けんかをして泣いてばかりいた子が笑顔で学校生活を送れるようになったり、みんなの前で一言も言葉を発することができなかった子がたとえ小さな声であっても自分の思いを発表できるようになったりする姿をみせてもらうと、心から幸せな気持ちになります。教員にとって1番大切にすべきことは、「人を愛する心」だと常々思っています。小学生の問題は、子どもを取り巻くたくさんの事柄が複雑に絡まりあって生じます。この絡まりを解きほぐすことが難しいことですが、自分の目の前にいる子どもや保護者を愛し、心に寄り添って問題の解決に力を尽くしてください。 これから教壇に立たれる先生方はたくさんの悩みを抱えられることでしょう。でも、悩んだ分だけ、必ず子ども達を幸せにすることができます。教員は、自分の頑張りが自分以外の誰かの幸せのために役立つことを実感することができ、さらに我が身まで幸せになれる素敵な職業です。 子どもと共に学び、若いエネルギーで活躍されますよう、同窓の教員として応援しております。
(日本女子大出身の教員ですから、「信念徹底」「自発創生」「共同奉仕」の心を忘れずに。三つの教えは私の座右の銘です!)

『最初は学校独自のペースに乗って』
  成蹊中学校・高等学校 教諭  坂井 史子 (2006年度 家政学研究科生活経済専攻修了)


 春から教壇に立つみなさんは、今、夢と希望に満ちあふれていることと思います。 4月からは「先生」と呼ばれるようになります。学校では、新人であろうとベテランであろうと、生徒にとっては一人の教員に変わりありません。だから最初は自信が持てないのが正直なところでしょう。 ではどうすると良いのか。最初は、学校のペースで働くことでしょう。夢と希望を持って教員になるみなさんにとって、自分のやりたいことを自分のやり方でやろうという気持ちがあるでしょうが、まずは周りを良く見て周囲のペースに合わせてみてください。学校、特に私学には、その学校ごとの特色があります。それはこれまでの歴史の中で培われてきたものであったり、生徒の特性に合わせたものであったりしますが、それなりの理由や根拠がある場合がほとんどです。その学校のペースに沿ったやり方で流れに乗ることを第一に考えてみてください。学校のペースに合わせることができたなら、次にマイペースを発揮していきましょう。学校に限らず、社会はチームプレーで動いているものです。チームの中で自分を活かすには、チームの方針をよく理解することが大切だと思うのです。方針を理解できていれば自分の夢や希望を実現する方法も見つかってくるし、周囲から支援してもらうことも叶うでしょう。 生徒はどんなときでも可愛く思えます。一緒に色々な感情を共有できます。驚き、喜び、怒り、楽しみを感じ、自分自身も成長できる毎日になることでしょう。みなさんが教員という職業を選んだことを嬉しく思い、共にがんばる仲間として、心より応援しています。

『何があっても揺らがない教員に』
        白梅学園高等学校 教諭 渡部 恵奈 (2007年度 家政学部家政経済学科卒業)


 この春から教員になるみなさんは、きっと多くの期待と不安を抱えているでしょう。私もまだやっと1年目を終えたばかりの新米教師なのですが、この1年間では、学ぶこと、感じたことが本当に多くありました。ここでは、2つのことについて簡単にお話したいと思います。 私が今の学校に着任し最初に感じたことは、学校の中に入り生徒の前に立てば、どんな自分でも先生として扱われるのだということです。教員という仕事には研修期間があるわけではなく、仕事の内容や学校の仕組みも、自分でつかんでいかなければならないことが多くあります。分からないことは自分から積極的に質問し、少しでも早く学校の全体像を捉え、自分が学校の中でどのような役割を任されているのかを見極めることで、安心して仕事ができるようになると思います。 そして私がこの1年間で最も強く感じたことは、教員はどんなことがあっても、決して揺らいではいけないということです。学校という場所は不思議なところで、先生という立場で学校の中に入ってみると、自分は大きな風船の上に乗って、ふわふわゆらゆら浮いているという感覚にとらわれてしまうのです。学校の主人公は生徒であり、教員は皆その大きくて不安定な風船の上に乗っているような状態なのです。その風船は本当に繊細で壊れやすく、扱い方を間違えるとすぐにわれてしまいます。教員は、その風船がわれないように気をつけながら、大きな空に舞い上がっていくための手助けをするのです。生徒は本当に風船のように、毎日ふわふわゆらゆら揺れ動いています。ときには大人の力や言葉を求めるときもあります。だからこそ教員は、しっかりと自分の足で立ち、常に前を向いて生徒にお手本を示してあげなければならないと感じました。私はこの1年間で、生徒をよく観察し、気持ちの動きを捉えることがどれほど大切かということを学びました。それは、昨日までは元気だったのに次の日にはなんとなく元気がなかったり、暗い顔をしていたり、学校のこと以外にも家庭環境で問題を抱え、生きていくことにも苦労している生徒がいるということを知ったからです。教員が根本的な問題を解決してあげることはとても難しいですが、少しでもその生徒のためにできることを探すことが大切なのではないかと感じています。 失敗したり、怒られたりすることもあると思いますが、困ったことがあれば、先輩の先生方も生徒も助けてくれます。遠慮したりしないで、反省はしても後悔はしないように、毎日を精一杯楽しんでください!

『4月までの1ヵ月を「充電期間」に』
  狛江市立狛江第三小学校 教諭 笠井 美紀代 (2008年度 人間社会学部教育学科卒業)


 こんにちは。私は東京都で教員をしている卒業生です。いよいよ学生生活も残りわずかですね。配属校も決まりだし、4月からの生活に期待や不安で胸がいっぱいだと思います。  一昨年の手帳を引っ張り出したところ、わたしの残りの1カ月間は、遊び、バイト、ボランティア、大学関係…などがグルグルローテーションしてた1カ月でした。その時に、普段なかなか会えない友人や、進路の違う友人からは、おもしろい話がたくさん聞け、さまざまな刺激が受けられました。また、ボランティア校(現職場)では、机上では学ぶことができなかった実践的な現場を見せていただき、とても勉強になりました。ボランティアの後には授業のことや児童との関わり方で、教師になったときに実践したいことをノートにメモしていました。(後から思えば、教室の配置や、掲示の仕方ももっと見ておけば今に活かせたのではないかと少し後悔しています。)実際教員になると、他の先生方の授業を見せていただく機会が減ってしまいます。なので、この積み重ねは今でも自分の財産になっていると感じています。他には、普段なかなか行けないところ…例えば、東京電力の見学会に行ったり、美術館に行ったり…とにかく自分の引き出しを増やそうとしていました。 もし、担当する学年が決まったら…『小○教育技術』(小学館)や『○年生の担任』(各出版社から出ています。)などの本を読んで、その学年のイメージを膨らます…というぐらいで。本当に必要な知識は現場で勉強させてもらうのが一番かも知れませんね。たくさん吸収してください。 4月に素敵な出会いがありますように…。

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